奇跡をもう一度 2023/10/02

周囲の人間が囃し立てる。

現チャンピオンの君とチャレンジャーの僕。

去年、君はチャンピオンである僕を打ち負かした。

そして今年も周りは君が勝つことを望んでいる。

奇跡をもう一度、と。

失礼な奴らだと思う。

君が勝ったのは奇跡だと言うんだから。

あの時、君は全力を尽くし、僕も全力を尽くした。

あのときは楽しかった。一瞬ごとに君は成長し、それを僕が越え、また成長する。

自分の全力を受け止めてくれる相手がいるというのは、幸せなことなんだと思った。

そして君は勝った。

そこに奇跡なんてない。

だってそうだろう。

研鑽を重ねた僕らに奇跡なんて、いい加減なものが入り込む余地なんてない。

君の顔を見ると分かる。

前会ったときからからずっと技を研ぎ澄ましてきたことが。

君の努力がまぐれと言われたことが、悔しかったんだろう。

でも僕も同じだ。

負けたのが悔しくて、ガラでもないのに特訓までしてしまった。

そろそろ試合の時間だ。

さあ、始めよう。

次勝つのは僕だ。


奇跡のようなあの時間をもう一度

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る