第2話 野生のおじさんが現れた

 約1時間後、私は大きめの石に座って落ちている石をネズミみたいなモンスターに投げつけていた。モンスターは特に気にした様子もなく歩いている。そもそも石なんかに攻撃判定はないからだ。


じゃあ、何をしていたのかというと、私は完全にいじけていた。だってだって、そもそも私に初期武器が無いんだもん。みんな木の剣とか、木の盾とか持っているのに、私だけ何もなし。魔法も使えないし、タイムするにはモンスターを倒さなきゃダメみたいだけど、私に攻撃手段がないから、倒せない。


試しにパンチしてみたけど、自分の方がダメージを喰らってしまった。


本当ならいいやり方があるのかもしれないけど、それを調べるのも面倒くさいから、もう一回やり直そう。そう考えて次の職業何がいいかなと考えながら石を投げていた時だった。


「もしかして困っているのカナ? おじさんが手伝ってあげよっカナ? 」


野生のおじさんがエンカウントした。


天猫は逃げられなかった。


「もしかしてテイマーさんカナ? 初心者には難しいかもしれないネ? もし良かったら僕が手伝ってあげるヨ? 」


天猫は逃げられなかった。


「えっと……おじさん、これでもランカーだから、役に立てると思うんだケド……」


しゅんとするおじさん。無視はおじさんに効果抜群だったのかもしれない。少しだけ可哀想になってきた。


「あの、テイマーに武器ってないんですか? 」


私が反応すると、


「あるヨ〜 」


あるんだ。おじさんは嬉しそうに答えてくれた。


「天猫ちゃんは、武器が欲しいのカナ? 」


名前を呼ばれたことにビクッとなったけど、プレイヤーネームは公開されているんだっけ。


おじさんの名前はグレッグ。ふーん。おじさんでいいや。


「はい、1人じゃレベルが上がらなくて。」


正直に答える。


「いいヨ〜。これあげちゃう。」


そう言って、アイテムボックスから取り出したのは、鉄製の鞭だった。


「やっぱり、テイマーと言ったら鞭だよネ。」


「いいの? 」


いかついのが出てきて若干びっくりして、敬語を外してしまった。


「いいヨ、いいヨ。その武器、僕は使わないからネ。それに敬語は不要だヨ? ゲーム内だからネ。」


「わ、分かった。」


私がそういうと、おじさんはいいねいいねと頷いていた。一人称、僕なんだ。


「じゃあ僕はこれで。一緒にレベリングしてあげたいけど、用事があるからごめんネ。もし余計なお世話だったら、その武器売るなり、解体するなりしてくれていいからネ? それじゃあ。」


お礼を言うまでもなく、おじさんは去っていった。

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