静寂に包まれた部屋 2023/9/29

彼は待っていた。

物音ひとつしない、静かな部屋で。

誰か特定の人間を待っているわけではない。

いつ来るかも知らない。


ここは打ち捨てられた廃墟である。

普通はこんな場所にわざわざ来る人間などいない。

それでも、たくさんの人々が彼のもとにやってくるのだ。


彼は一体何者だろうか。

その答えは幽霊である。

それも、どちらかといえば悪霊の類の。

幽霊なんて怖くないと言って、肝だめしにやってくる若者を驚かせていた。


彼は生きている間の頃は覚えていない。

おそらく自殺だったと思う。

しかし幽霊として自我を得た。

これを第二の生と捉え、彼は幽霊としてふさわしい振る舞いをすべきと考えた。

そして、ここにやってきた人間を驚かせている。


彼は充実していた。

噂が噂を呼び、たくさんの人間がやってきた。

その全員に叫び声を上げさせた。

そしてこれからも、そうするだろう。


彼は遠くで誰かの気配を感じた。

また誰かが肝だめしにやってきたのだ。

仕事の時間である。


彼は待つ。

彼らがこの部屋の来ることを。


彼は静寂に包まれた部屋で待っている

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