第13話 次は2人で
その言葉に、俺も理性がなくなりそうになる。
だがしかし、カーテン越しには俺の服を一生懸命選んでくれている恋の姿が容易に想像できる。
それだけで俺の理性は保たれていた。
「2人とも大丈夫そ~?」
カーテンの裏側でこんなことが起きていることなんて予想もしていない恋は、服を選び終わったからか、声をかけてくる。
「あ、うん! ……なんとか大丈夫かも」
万が一開けられないように、俺はカーテンの端を少し抑えながらそのばしのぎに言う。
「ボタン、そんな留めにくいの?」
「結構手こずっちゃってる」
「私、手伝おっか?」
「ううん! もうすぐ終わるから大丈夫だよ」
「そう? なら近くの椅子で待ってるね~」
この状況を恋にでも見られたらおしまいだ。今回、俺はなにもしていなくとも、愛ちゃんが何か俺を悪くいうような嘘をでっち上げればそちらを信じるだろう。
彼氏と妹だ。絶対に妹を信じる。
「チっ……案外早かった」
恋が来たことに、不機嫌そうに舌打ちをして呟く愛ちゃん。
実の姉に舌打ちするのはヤバいだろ。それにいつ恋が来てもおかしくないような状況で手だしする方が悪い。
別に提案するわけではないが、ちゃんと2人きりになれるところでした方が邪魔も入らなかっただろうに。
爪が甘いようだ。
それとも、露出狂みたいに、誰かが来るかもしれないということに興奮する変態か。
後者の方がありえそうだな。なにせ姉の彼氏を寝取ろうとしているんだから。
「今回はこれで勘弁してあげるけど、今度はちゃんと襲ってあげるから覚悟してね?」
諦めたからか、愛ちゃんは俺のズボンのボタンを留めると、耳元で囁き、更衣室をそそくさと出ていく。
「……危なかった」
と、俺は安堵のため息をつく。
あの状況があと数分でも続いていたら、更衣室が行為室へと変わるところだった。
恋に察せられないため、俺は鏡で一度自分の顔が赤くなっていないかを確認して、更衣室を出る。
すると、愛ちゃんは何事もなかったかのように、恋と楽しそうに話をしていた。
どうやったら、さっきの状況からこんなにもすぐに切り替えられるんだ。そこだけは尊敬するよホント。
「着てみたけど、どう?」
「えぇ~、凛久くんめっちゃ似合ってるじゃん!」
俺を全身を眺めると、椅子から飛び跳ね、自分が選んだかのように喜ぶ恋。
「案外似合うよな」
「やっぱ愛はセンスがいいなぁ~。羨ましい」
「あれ、お姉ちゃん服選んでたんじゃないの?」
そういえば、恋は服を選んでいたはずなのに、どこにも選んだであろう服が見つからない。
「この時間だけじゃ決まらないから……今度もう一回来て決めることにするよ」
「そこまでするのか……」
「ホント、お姉ちゃん節が出てる」
どうやら、俺はここにもう一回来るのが確定なようだ。
次はもちろん、2人きりなことを願おう。
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