第11話 シちゃおっか
「お姉ちゃんもああ言ってることだし、お邪魔しまーす」
「おい、ちょ――」
俺の許可を得ることなく、更衣室に入ってくる愛ちゃん。
非常にまずいぞ。
カーテン一枚という、声も向こう側に聞こえるが、密室だ。
そして、ズボンのボタンを閉めるというなんとも嫌なことが起きそうな展開。
「お前、これわざとか?」
ズボンをが落ちないよう、手で押さえながら言う俺。
「ん~? 何が~?」
「何がじゃねーよ。このズボン選んだのわざとだろ」
「どうして~?」
「2人なる口実を作ろうとしただろ」
「私知らないな~」
なんともわざとらしい言い方をする。
悩みの種を増やさないでほしい。ただでさえ俺は問題を大きくしたくないから愛ちゃんとあまり関わりたくないのに、これじゃ、問題が増えるばかりだ。
「……こうなったら仕方ない。早くボタンだけ留めて出てってくれ」
諦めた俺は、ため息交じりに愛ちゃんに言う。
このまま返すと、俺の服を楽しみにしていた恋が残念な顔をしてくるのは目に見えている。
ボタンを留め終わったらすぐに追い出す。
「えぇ~、せっかく2人になったんだし少し話ましょうよ」
「話すことなんてないぞ別に」
「私は凛久くんとお話したいんだけどな~」
「俺はしたくないの」
「お姉ちゃんが悲しむから?」
「そうだ」
「でもお姉ちゃん。私と凛久くんが仲良くしてるの嬉しいって言ってたよ?」
「それは事情を知らないからだろ……」
もし、俺たちが一度体を重ねあった関係だと知ったら、恋は今すぐ俺から愛ちゃんを突き放すだろう。それが普通だ。
「私も凛久くんも、お姉ちゃんを悲しませたくないのは同じでしょ?」
俺の顔を覗きながら言う愛ちゃんに、
「同じなのはそれだけだ。他は違う」
「凛久くんは、お姉ちゃんに私たちの関係をバラされたくないし、私もバレたくはないけど、被害者ずらできる……私の方が圧倒的有利だね」
「お前、何を企んでる」
そうだ。俺は弱みを握られている。だから、下手に逆らったら終わりだ。
どうにかして愛ちゃんを回避しなきゃいけない。難題だが、やらなきゃいけないことだ。
「バラされたくないならって言い方は脅しみたいで嫌だから、せっかく2人きりになったからってことにして――」
「おい……っ」
愛ちゃんは俺の下半身を握り、耳元でささやく。
「ねぇ、ここでシちゃおっか」
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