第12話 夜のお勉強
お針子さんは寝ている時間以外は仕事をするのが当たり前なブラックな世界、そんな彼女達の就業時間を公務員並みに設定したが、
余った時間はお勉強、針と布地をペンと計算用紙に持ち替えて算数の勉強、
「……はい、ではテトラ、この三角形に内接する円の面積はどうやって計算しますか?」
「辺の長さから半径が7.5と割出せますから、直径は15です、後は公式通りに二乗して0.78を掛ければ面積が出ます」
「はい、そうですね」
彼女達は気球が完成したらさようなら、と言う訳にはいかない、気球の作り方はしばらく門外不出にしたいから、私の手元に囲っておく必要がある、そんな打算的な考えだよ、
先生役はわたしとロウルデス、それにレナーテ先生も賛同してくれて、彼女達の勉強を見てあげている。
しばらく前までは簡単な計算と自分の名前の読み書きくらいしか出来なかったお針子さん、あっという間に能力を伸ばし、更に貪欲に知識を貪っている、
“こんなに優秀な子、学校に行かせたらひとかどの人物になっていたのでは”
二人を見て思う。
◇◇
優秀なお針子さん達のおかげで、気球のバルーン部分は完成した、次はホットセクション、
皆の前で図面を広げる、最初はぎこちなかったお針子さん達だけど、今では話が出来るくらいまでになった、けどわたしを呼ぶ時は相変わらず“お嬢様”だけどね。
湖畔に向けてバーナーのテスト、
「お嬢様、こちらの筒の中に炎魔具と、風の魔具を置いて、両方を起動させますと、温風が強い勢いで出て来ます」
「筒も熱くなるわよね」
「最終的には石綿で包み、更にその上から皮を被せる予定です、まずはご覧ください」
湖の方向に向けて温風、いやもはや熱風を吹き出す、熱で景色がユラユラしているが、かなり遠くまで景色が歪んで見える、
「良いですねカルロータ、これを布の袋に吹き込めば空に向かって浮かんで行きますよ」
「お嬢様、それですと、空に浮かぶだけですよね」
そりゃそうだ、熱気球だもん、
「まぁ、そうですね」
「風魔法の魔具を推進機にすれば自由に動き回れるの思うのですけど」
なにこの子達、単純に頭が良くなっただけじゃなくて、新しい事も考え付くのかしら。
「テトラ、魔石はどれくらい必要かしら?」
魔力のこもった魔石はその量に応じて色が変わる、空っぽだと真っ黒の単なる石、紅色から紫、青、緑、黄色、最後は白く輝くと言う、
「青か緑の魔石が有れば良いかと思うのですが……」
「分かったわテトラ、若に訊いてみますね」
◇
「……そう言う訳で緑色の魔石が欲しいのですけど、レッケブッシュ伯爵に頼んでもらえませんか?」
「ニコレッタ、石はどこだ?」
「これです」
「そちらの袋も出せ」
後ろに控えているシーラが袋を差し出す、
「こんなにたくさん出来るの?」
「何を言っておる、見ていろ」
エンゲルブレヒトが両手をかざすと、真っ黒だった石があっという間に紅、紫、青、緑と色を変えて行く、緑から黄色は少し間が有ったが確実に増えて行き最後は白。
「まずは一つ」
お茶請けのクッキーを食べたかのような軽い口調。
最後の石は少し時間がかかったけど、白色に。
「まぁ、こんなもんだ」
「有難うございます、エンゲルブレヒト様」
そうそう、空っぽになった魔石は補充する事が出来る、まさにバッテリーだ、
それにしても白色の魔石なんて最高位だよ、王族は伊達ではないわけだ。
「エンゲルブレヒト様、一気にあんなにたくさんの魔石を白まで、お身体は大丈夫でしょうか?」
「あっ、いや何ともないぞハーゲン、魔力が増えたのかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます