第26話 和平の果ての静けさ
秀頼の彦根幕府が成立して数年。平和が続く中、如庵と斗升の提案による教育改革が実を結び、子供たちの笑顔が街を満たしていた。新しい思考方法が導入され、批判的思考や創造性を重んじる教育が、国民の意識をゆっくりと変えつつある。
斗升が開発した医療機器は、各地の診療所で使われ、病気の治療に革命をもたらした。未来の知識を活用した新薬も開発され、多くの病が根絶される兆しが見え始めていた。
一方、家康はこの平和を外面的には祝福しつつも、内心では不満を抱えていた。彼は自らの権力基盤をしっかりと保ちつつ、秘密裏に私兵を鍛え、情報網を拡大していた。彼の野望は、まだ表面化してはいなかったが、影での動きは確実に進行していた。
秀頼は如庵と斗升の支えを得て、国内の安定を維持するために精力的に働いていたが、未来から来た二人の提案に全幅の信頼を置いていたわけではない。彼は彼らの提案が、長い目で見て日本にとって最良の選択なのかどうかを常に考えていた。
幕府としての新しい政策の一環として、農業の効率化が推進される。如庵は、斗升が開発した農具を用いて、作物の生産性を大幅に向上させる計画を実行に移した。この変化は農民たちにとっては神送りの恩恵となり、食糧不足の解消へと繋がっていく。
この頃、文化の面では、日本の伝統的な芸術に新しい息吹が吹き込まれていた。絵画、彫刻、そして文学において新たな才能が芽生え、如庵と斗升はこれを積極的に支援していた。特に、新たに導入された印刷技術は、知識と情報の普及に貢献し、新しい作家や学者たちが登場する基盤を作り上げていた。
しかし、この変化を良しとしない者たちもいた。家康は、これらの変化が自らの影響力を脅かすものと見なし、反如庵・反斗升の勢力を暗黙のうちに結集させていた。如庵と斗升はこのことに気づいていながらも、彼らの理想を追求し続けることを選んだ。
この和平の時代が、いつまで続くのか、誰にも予測することはできなかった。そして、家康の暗躍は、この静けさの裏で、次第にその形を現していくのであった。
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