時空を超える策―関ヶ原の運命

第6話 滝如庵の秘密

夜は更けていく。滝如庵は、彼の茶屋で静かに燭光を眺めながら遠い記憶に浸っていた。彼の本来の世界では、歴史書は関ヶ原の戦いで石田三成が敗れ、徳川家康が勝利すると記されている。しかし、彼の心にはもう一つの重要な理由があった。

「実は…」彼はそっと自らの過去を明かし始める。「私は豊臣家に個人的な理由で深く結びついているんだ。令和の時代に私はある古文書を発見した。その中には驚くべき事実が記されていた。豊臣秀吉の子、国松が実は生き延びていたというのだ。」

この事実は、彼にとってただの歴史上の趣味趣向ではなかった。その文書には、国松が密かに育てられ、後に子孫を残していたという。滝如庵自身がその血筋の末裔だったのだ。彼の心は複雑な感情に満ちていた。

「もし、三成様が関ヶ原で勝っていたら…。豊臣家が存続し、日本の歴史はどのように変わっていたのだろうか。そして、私の家族の運命は…」彼の眼差しは遠い過去と未来を行き来していた。

滝如庵の心には、石田三成への支援は単なる時間軸を正す行為以上のものであった。それは、自らのルーツに対する深い敬意と、歴史に残された「もしも」への憧憬だった。

「だから、私は三成様に全てをかける。彼が勝てば、私の先祖の未来も変わる。運命を変えるために、私はこの時代に戻ってきたんだ。」

この夜、茶屋には滝如庵の固い決意と共に、時代を超えた思いが静かに満ちていた。歴史の渦中にあるこの時代に、彼はただ一人の運命を背負い、静かに時の流れを見つめていた。