第2話 DNA分析を越える制御

 二十六世紀。一隻の光推進宇宙船がアルファ星への着陸軌道準備段階へと入っていた。




「二十年ぶりのアルファ星だ。漸くゆっくり出来るぞ」


 男は操縦桿を持ちながら一人呟いた。




「こちらは第18番アルファ星管制案内である。入星目的と積載を教えなさい」


 アルファ星の管理局からの誘導通信が入る。




「目的は故郷への帰還。美女をひとり積んでいます」


 男がそう告げると、管理官は、


「いかん。そんなものをアルファ星に持ち込んでは」と怪訝な声を出した。




 男は意味が分からず、


「なぜです」と訊ねる。


「十年前からアルファ星は美女を連れ込んではいけない法律になっている」と言う。




 納得がいかず男は、


「理由を教えてください」と食い入る。




「種族安泰の目的だ。そこで美女は連星であるお隣のベータ星に連れて行くことが、法律で決まったのだ」




 しっくりこない説明だったが、お隣の星なら受け入れてくれるというのならと、男は納得した。




「じゃあ、ベータ星になら入れると言うことですか?」


「いかにも」


「わかりました」と管理官の指示に従い、男は軌道修正をかけ、すぐお隣の星のベータ星への着陸準備に入った。




 ベータ星の管理官は、やはり同じように訊いてきた。


「積載物は?」


「人間。美女ひとり」




 今度の星の管理官はそれにOKして、


「よし入れ」と言う。




 宇宙船を下りて、美女とふたりで男は、審査ゲートに入る。


 お世辞にも格好良いとは言えない、審査官が、


「女は良いが、おまえは来るな」と男を止めた。




「なぜですか?」と男。


「おまえが美男子だからだ」と言う。




「意味が分からない」と男。


「法律で美男子はアルファ星に行くことが決まっている」


 男は「いったいどうなっているんだ。その法律は」と憤慨した。




 審査官は仕方なく男に説明を入れる。




「二十年前に、結婚できない男女が数多く出来てしまい、アルファ星とベータ星の政府は困ってしまった。皆が平等に結婚できるようにするため考え出された方法が、美人をベータ星に、美男子をアルファ星に集める方法だった。我が星の政府は法律で、遺伝子の操作をしてはいけないことに大昔から決まっている。そこで皆が平等に結婚できるように、美女と美男子をカップルにしないための法律を作ったのだ。そうすれば、次の世代で、均等な容姿の子どもたちが出来上がるからな」




 男は一目散で女を連れて自分の宇宙船に戻ると、アルファ・ベータ星系を離れた。


「美男美女のカップルを差別するような星に住めるか!」と怒りながら安住の地を探しに旅立った。


                             了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る