第10話 決戦


 街の手前で、人とモンスターの陣営が対立した。


「よく逃げずに我と対峙する事を選んだ。褒めてやろう」


 魔王の圧倒する声に、先頭に立つ勇者は怯んだが、勇気を出し言い返す。


「街を襲い、人々に害をなす魔物よ。一匹残らず駆除してやる!」


 一匹残らず駆除というのは流石に言い過ぎだと、魔王はショックを受ける。適切な捕虜契約を戦闘前にどう交わすか考えていた時であった。


 街の方から無数の砲弾が飛んでくる。飽和攻撃がモンスターを襲う。まるで地獄絵図だ。キマイラは大怪我をしたし、弓矢使いは右腕を飛ばされた。


「うぉぉぉ!!」人権無視な先制攻撃に怒る魔王は、恐怖の波動を放つ。


 その波動によって、人間たちは身動きが取れない。そこに魔王は追撃するように白い息を吐いた。絶対0度の超冷風が襲う。それに触れたものは草木や土すらもただの白い物体となる。その白い線が魔王から街まで渡り伸びた。


 だが、隊列をかわすように白い線は伸びて、人々に被害は無い。動きを取り戻した勇者は幸運を喜んだ。


「今、書いた白い線より外側は降参エリアとする。投降や怪我で、そこに逃げ込んだ者は追撃しない」と魔王は胸を張り宣言した。


 魔王の気持ちを汲めない勇者は「そんな臆病な人間はここにはいない! さあ全軍攻撃だ!」と叫び、戦闘の合図となった。


 隣で見ていたお化けランプも、魔王が何をしたいのか理解するには難しすぎた。

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