錬星術師は今日も英雄になりたがる
物真似モブ
2025年:春
第1話 英雄志望の少女
2025年 3月17日
『錬金術師』と呼ばれる人々が多く住まう超未来型都市、
この街で作られる多くの資材や商品は上質な物ばかりで、都市の発展に一役買っている。
そんな街の外れで、軽トラを押し出す少女がいた。
「おじ様大丈夫ですの?私が来るまで死にそうになってましたけれど」
「ああ。君が手伝ってくれて今は全然平気さ。・・・そっちこそ、トラック押すの疲れてないかい?」
「ええ、平気平気。余裕ですわ」
男性は、数分前から軽トラックを押している少女に礼を言う。
男性は去年の夏から脱サラ独学のスイーツショップを経営している。大人気のバウムケーキは、星河市の住民を魅了してやまない。
しかし、農家との仕事のあと、トラックの横転が起こった。幸いなのは、自身もトラック、積荷も無事である。それを確認した後、ため息をつく。
『カンパニー製のお陰で助かったけど、最悪だ…』
偶然見つけた近道を選んだのがいけなかったか…と自問自答を繰り返し、車を押し出そうとする。だが、そうそう動くはずもない。息の荒い男性の手には血がにじみだす。
しばらくした後、レッカーを呼ぶ為携帯を取り出す。が、アンテナは圏外。
『そこのおじ様大丈夫ですの?』
いよいよ不運の積み重ねで涙が
そして現在。聞けば少女は、困っている人々を探して星河市を走り回っている途中だと言う。
「少しは休憩した方が…」
「はっ、全然平気!私を止めるにば積載量不足!そして
「・・・ありがとうね」
少女、杏奈はニコリと笑う。その笑顔に男性は少々気まずそうにしながらも杏奈に車を押してもらいながらハンドルを操作する。
言葉の通り、杏奈の足取りは止まることは無かった。どころか徐々に加速し、速度計は60kmを超えたことに驚いた。
車を押している最中、男性はサイドミラーに杏奈の腕のブレスレットがチカチカと点滅もが写った事に気づいた。
「へっ、あっという間に到着よおじ様」
「本当にありがとうね…杏奈ちゃん・・・」
「………」
「杏奈ちゃん…?」
人の優しさに触れ、男性は泣きそうになる。しかし突然黙り込み、体を震わせた杏奈に驚き駆け寄ろうと─────
「…もっと褒めてくださいまし…?」
当の本人はお礼を言われた事を快感に感じ、恍惚の表情を浮かべる。その表情に少々面食らったものの再度「ありがとう」と、礼を述べた。
彼女は星河市きっての大企業『大金持カンパニー』の娘であり、清く正しく育てられる。
父は社長、母は宇宙飛行士、兄は特撮ドラマのアクター、末っ子の彼女は日課が人助けという、やや特殊な家族である。
彼女の手首には特撮ドラマのヒーローが身に着けている、
そして4月からは星河高校に入学する、至って普通では無い少女である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます