禁め詩(仮題)

エンネ・エルレーテ@詩人系VTuber

#1

 夜半に生成されるの真実っぽさ、わからなさというものをわからないでいるいまのうち、いまだからこそ綴っておきたいとそうした思いがあってこれを物しているのですが、しかし読む者の無いと知って描かれる線形のどうしたかたちをとるものか、どこまでもわからない、わからぬばかりで不思議な感覚をおぼえます。

 なんにもならないこんなもの。

 だからこそ、だなんてばかげているでしょうか。

 ねえ。

 どう思う。


 『〈思惑しゅわく端端はしばし〉〈ねむりのまぎわのゆらめき〉らしき附随物ふずいぶつを載録致しました。視認性については保証しかねますが、送るだけおくります』


 わたしは窓辺に月の崩落をながめながらしたためておりました。

 通信は日に数度、樹上の不明を通じておこなわれます。

 不明です。

 不明の不明性のあきらか具合はじつに欠けるところのないほどでして、ほんとうになにもかもが不明なのですが、そのくせどうして有用でもありますから、扱いのこれと定まらぬままに方方ほうぼうで用いられているわけなのですけれども、しかしながら不明の不明であるにはちがいなく、胡乱うろんな話も一部では──さておきわたしは返信し、印をつけ、手帳を閉じ、ねこをなで、珈琲を淹れ、さきに淹れておくべきだったと淡く悔い、ねこをなで、対象をさがしはじめました。

 わたしの器官は〈ひかりのいくつかたゆたうみたいな虚構群きょこうぐん隔視的かくしてき結晶けっしょう氾濫はんらん〉を経験しております。

 経験し、ながらえて、狂いも狂えもしないまま、延延こうして此処に在りつづけられています。

 観測者としての資質が十分に備わっているというわけですね。

 つまるところがあつらえむきなのです。


『見ました。きれいです。以下、前回の結果です。さいはての花譜かふ此岸しがんに影響します。おこりはかすかなつめたさで、次第に深く、逓増ていぞうし、


 たまさかの干渉によってうろ周縁しゅうえん、不全域の駆動が生じます。

 わたしたちが理法と呼ぶところのものはそのつど消尽します。

 このうえなくすみやかに。

 遷移せんいにあたって感ぜられるのは、世界はまったき可笑しなものだということです。

 おかげでたいていの折、機嫌よく過ごすことができているのですけれども、そのぶん厄介の紡がれなくもないですから、畢竟ひっきょう均衡はとられているのかもしれません。


 わたしはつたないことばのつぎのようにあてがい廻廊を読みこみはじめました。

 ゆきさる星らの途切れがちな曖昧がいまは懐かしい。

 水のうた、古い日の……揺籃期、ひとつもたしかでありえなかったころ、どうしてさびしいほころびだったころ、まつわるかげさえしずかであったころ……放縦ほうじゅう錯謬さくびゅうの夢想的配架に依ってようよう現象しうる何者かでしかなかったころのうたを、おもいだすともなくおもいだしています。


 凪、ひずむふうにとけてく。

 青の滲む深奥はきれいだって誰でだっていいのおしえて。

 おさなさひとつもたずさえきれないきれなさかかえて軌道上にねむりたいとねがった。

 たがえてしまえば輪郭わずかもとらえることさえないからと、わたしはわたしを忘れるそれぎりまもりもかなえもされないままで、羅列された花房はなぶさ、捧ぐようにかざすの、落剝らくはくの瀬にとなうみたくつないで、非有ひうに秘する不壊ふえの波にたたえて。

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