彼と私のCONSENT
亖緒@4Owasabi
#プロローグ
第1話 告白①
「き、来てくれて、あ、ありがとう。その……早坂のこと、す……ずっと好きでした。ぼくとこっ……恋人になってください。お、お願い、します」
「私でよければ、よろしく、お願いします」
体を強張らせながら、声を上ずらせながらも、しっかりと告白の言葉を音にした彼は、私の方へ右手をさし出した。
私は両手でその手を取りながら、受け入れの言葉を返した。待ちに待った告白なのだから――
◇◆◇
小学校卒業を間近にしたある日の授業終わり。私こと早坂莉緒は、同学年男子から音楽室まで呼びだしを受けた。
私を呼びだした男子は同じ学年の庄子裕真くん。近所に住む男の子で、私はふだん彼をユウくんと呼んでいる。
ユウくんとは2年生のときに知りあった。けれど、仲良くなったのは3年生になる手前の春休みのことで。何てことはない、犬に追いかけられた私を助けてくれたのがユウくんだった。このときからユウくんのことが気になりだした。
3年生、4年生では同じ学級だったこともあって、毎日の学校終わりには近所の公園に集合して二人で遊んでいた。私は女の子らしくなく、よく二人でドロだらけになりながら追いかけっこをした。心からとても楽しかったことを覚えてる。
けれど5年生では教室が違ってしまい、そのまま6年生になった。だから5年生からは一緒に遊ぶことはへった。でも放課後クラブに一緒に入って同じ球技を始めたから、一緒にいる時間は変わらなかった。
二人で始めた球技はミニバスケ。同じコートに二人で立ち、オレンジ色のボールを時に一緒に追いかけ、時にうばい合い、二人でコートをかけ回った。
でもその二人一緒にいれる時間はとうとつに終わった。私に成長痛が訪れたから。身長が勢いよく伸びたわけでもなく――胸がふくらみ始めたからだった。
6年生一学期のある日の練習で、ボールを胸に受けてとっても痛がった私を見て、ママに続けることを反対されてしまった。辞めたくない、ユウくんと一緒にいたい。そうお願いしたけど聞き入れてもらえず、ユウくんと一緒に過ごす時間は本当にへってしまった。
ユウくんが練習を終えるまで、私は体育館のすみっこで待つようになり――いつしか一緒に同じ場所に立てないことにつらさを覚え、私の足は体育館から遠のき、ユウくんと会わない時間ばかり増えていった。
このままではユウくんと、はなればなれになってしまう。危機感を覚えた私はユウくんに告白をしようとした。そしてそれはユウくんに止められた。ぼくから告白させてほしいと。
それがようやく実行されたのが今日だった。
◇◆◇
「やっと約束をはたせたよ。待たせてごめんね」
「ほんとだよ。それに何よ早坂って。いつも通りリオって呼んでよ」
これからのことを落ち着いて話しあおう。そう提案して手近な席に並び座ったとたん、ユウくんは申しわけなさそうにおわびの言葉を口にした。喜びの熱を冷まされた私は口をとがらせ悪態をついてしまった。まして名字呼びのよそよそしさにいら立ってしまった。
「上手に口が動かなくて。名字呼びしてごめんね、リオちゃん」
素直に謝ってくれたユウくんに私は気はずかしくなり、顔を背けてまくし立てた。
「そもそも私の返事はわかってたでしょ」
「うん、わかってた。だから、考えてたんだ。ぼくたちが、この先ずっと、一緒にいれる方法はないかって」
ユウくんは自分がかかえた不安を少しづつはき出していく。
「ぼくはリオちゃんのこと手放したくない。告白したらこの気持ちを止められない。だから時間がかかっても考えていたんだ」
「私はユウくんからはなれないよ。だから不安――」
ユウくんの想いはとても強くて、はなれたいなんて思っていない私にはとってもうれしくて。だからその不安を取り除こうと言葉を返した。けれど、それはさえぎられ、さえぎった言葉は思いもよらないものだった。
「ぼくに姉さんがいるのは覚えてるよね?」
「さよ姉のこと? うん、覚えてるよ。まだ中学生、うんん、この春から高校生だったよね」
「そう、咲依姉さんのこと。姉さんには恋人がいたんだ。でも別れた」
「ええ! 初めて聞いたよ。いつからいたの?」
庄子咲依さんはユウくんのお姉さんで二人姉弟。咲依と書いてさよりと読む。だから私はさよ姉と呼んでいた。
さよ姉は私たちの3つ年上だから、私たちが4年生になったときには中学生になった。なので私も遊んでもらったのは3年生だったころのおよそ1年間だけ。さよ姉は先頭を切ってかけ回り、一緒にドロだらけになって遊んでくれた、恩人のような人だった。
そんなさよ姉に恋人がいたことに、私はおどろきをかくせなかった。
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