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ただし、一つだけ気になることがあった。それはめぐみの髪がとても短いことだった。
そのことだけがのぞみの心に引っかかった。のぞみは自分にきっと似ていると思っていためぐみの髪は長い黒髪だと思い込んでいた。でも実際は違っていた。すくなくとも、のぞみがめぐみの絵が見たいと言って、しずくが倉庫の中にあるたくさんの絵の中から選んできためぐみの絵に描かれているめぐみの髪は短かった。長さも髪型も今ののぞみとそっくりだった。
「綺麗な人ですね。それにとても優しそうな人に見えます」とのぞみは言った。
「どうもありがとう」とまるで自分のことのように喜んでしずくは言った。
「それにまるでお手本のような顔で笑ってます。本当に幸せそうな顔。いいな」とのぞみは言った。
「でも絵を描き始める前はずっと怒っていたんだよ。絵のモデルなんて絶対にしたくないって言って、ずっと怒っていた。じっと椅子に座ってもらうまで、すごく大変だった」としずくは言った。
でも、モデルをしてくれた。恥ずかしそうな顔。嬉しそうな笑顔。そのときの二人の会話がなんとなく聞こえてくるようだった。幸せなんだ。羨ましいな。のぞみはじっとめぐみの絵を見つめている。その顔はいつのまにか優しい雰囲気で笑っていた。
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