40
ふと伸ばしていた黒髪をばっさりと切ろうとのぞみが思ったのは、そんなときだった。
事務所に確認をしてみると、いいよ、と言う返事がきた。絵のモデルをしているので、しずくにも確認をとってみると、しずくも、かまわないよ、と言った。なのでのぞみはさっそく自分の長い黒髪をばっさりと切って綺麗な耳が出るくらい短くした。
「おはようございます」
新しい私になった姿を早くしずくに見てもらいたいと思って、今朝はいつも以上に自転車を濃く足に力が入った。
短い黒髪になったのぞみを見て、しずくはしばらくの間、目を大きく見開いてのぞみの顔をじっと見ていた。
「あの、やっぱり変ですか?」と少し照れながらのぞみは言った。
そののぞみの言葉にもやっぱりしずくは無言のままだった。
それから二人は今日もいつものように絵を描く作業を開始した。
のぞみはしずくの前でいつものようにじっとしている。
でも昨日までと違うのはのぞみの髪が短くなっていることだった。だから今日からしずくが描いている四角いキャンパスの中には新しいのぞみがいるはずだった。
そこまで考えたところで、では昨日までの私はいったいどこに行ってしまったのだろうか? とそんなことをふと疑問に思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます