24

「しずくさん。一緒に雪を見ませんか?」とのぞみは言った。

「雪?」としずくは言った。

 休憩中ののぞみとしずくは二人でアトリエの大きな壁一面の窓を開けて、そこから森に降る雨を見ていた。

「はい。今、一緒に雨を見ているから、今度は一緒に雪を見たいんです。しずくさんと一緒に」と甘える声でのぞみは言った。

「だめですか?」

「ううん。だめじゃないよ。そうだね。今度は一緒に雪を見よう」とのぞみを見てしずくは言った。

 それから少し作業をして、しずくはお昼寝をすると言ってソファの上で眠ってしまった。(それは良くあることだった。しずくは猫のようによく眠った)

 しずくが眠っている間にのぞみは洗濯した服を乾燥機の中に入れて乾かした。コーヒーを淹れてそれを飲んだ。そらからのぞみはアトリエにある数枚のしずくの描いた森の風景画を眺めた。そこには森の四季があった。のぞみの知っている森の風景もあったけど、のぞみの知らない森の風景もあった。とくにのぞみの目を引いたのは春の色とりどりの花が咲いている美しい色彩の森の絵だった。

 綺麗。なんて綺麗な絵なんだろう。とのぞみは思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る