学校で一番可愛い菱屋さんが「自販機からゴブリンが出てきた」と泣きついてきた

山田露子☆10/10ヴェール小説3巻発売

第1話 なんで日本にゴブリンがいるのよ


 十六歳の男子高校生がこんな目にあう確率は、何パーセントくらいなのだろう。


 どういうわけか、今ね、洗面所の床に押し倒されているのだけれど。


 学校で一番可愛いと言われている超絶美少女が半裸でまたがり、こちらのベルトに手をかけている。つまり彼女は、今日初めてまともに会話したモブ男子の服を無理矢理脱がせようとしているわけだ。


 綺麗な顔を真っ赤にして、


「ほら――ズボンとパンツを脱いで、全部私に見せなさい!」


 と修羅(しゅら)な命令をしてくるのだが――この緊迫感を台なしにしているのが、彼女の背後に見切れているゴブリンくんだ。


 ドラム式洗濯機の横に佇んでいるよ、薄緑色の小っこいモンスターが……。


 そもそもさ、なんで日本にゴブリンがいるのよ。


 おかしいよね。


 この状況、おかしくないところがひとつもないよね。


「抵抗するんじゃない、南町(みなみまち)くん!」


「やめてくれ、菱屋(ひしや)さん! パンツを脱がさないで! 恥ずかしい!」


「脱げ! 君の服を剥(は)いでいる私だって恥ずかしいの! 私に恥をかかせるんじゃない!」


 可愛い顔してものすごい俺様理論! どういう育ち方したの、この子!


 なんでこんなことになったのだろう……半日前はまだ他人同士だったじゃないか、僕たち。友達ですらなかったぞ。


 床に押し倒された状態で服を脱がされながら、南町亮介(みなみまち りょうすけ)は涙目でそもそものきっかけを思い返していた。


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