第11話
ケイトside
エレベーターで部屋に戻る間も、離れるのがもどかしくて俺はテラさんの首筋にキスを落とす。
チャラ男なのかとテラさん聞かれた俺は動きを止め考える。
俺はチャラ男ではない。
しかし、今まで俺は身体の欲を満たすためだけに女を何十人も抱いてきた。
愛がないのにその行為が気持ちよかったかと聞かれれば、それは男の身体の構造上、普通に気持ちよかった。
だけど、テラさんとキスをして俺は思った。
キスだけであんなにも心も身体も満たされたのは初めてだと。
こんなにも愛おしい人に手を出したのは俺にとってみれば、一世一代の覚悟を決めた行為だった。
なのにもしかしたらテラさんからしてみれば、付き合ってもないのにキスした俺は今までのチャラ男と同じで、ただの気まぐれで自分に手を出したと勘違いされているのかと微かな苛立ちと不安を覚えた。
K「告白ってそんな重要ですか?」
T「え…そ…そんなの当たり前じゃん…」
K「なんで?」
T「なんでって…だってそれは…普通は告白をして付き合ってから手を繋いだり抱きしめ合ったりキスをしたりするでしょう?」
K「誰が決めたの?」
T「き…決めたとかじゃなくて世間一般ではそうじゃん…ケイトは私と違ってそういう事には真面目だと思ってた!」
K「私と違って…って事はテラさんは俺以外と付き合ってもないのにキスしたり寝たりした経験…あるんですね?」
私と違って…
その言葉でこの人は俺以外の男とそういう軽い肉体関係を持った経験があるんだと悟ると、頭がおかしくなりそうなほど嫉妬心が芽生えた。
俺の言葉に戸惑うテラさんの目をみればそれが確信へと変わり、行き場のないもどかしい気持ちから唇をギュッと噛んだ。
俺の言葉に答えようとしないテラさんを問い詰めるかのように腰を力強く引き寄せる。
K「ねぇ答えなよ。他の男ともこんな経験あるのかって聞いてんの…拒む事だって出来たのにテラさんはいきなり俺にキスされても平気だったじゃん…」
俺は切羽詰まった顔を見られたくなくてわざと余裕のあるふりをして、ニヤッと笑みを浮かべるとさらにテラさんを問い詰めるように近づき…
そんな俺を止めるかのようにエレベーターが目的の階に到着した事を知らせた。
テラside
ケイトと手を繋いだままジニさんの部屋に向かうと、ジニさんの部屋の前では黒スーツの男たちが立っていてケイトが首を傾げた。
その黒スーツの男達を避けるようにしてケイトがジニさんの部屋の扉に入ろうとするとその男達がケイトを止める。
K「え…なに?ジニさんは?」
「あの…その…」
男達は大きな身体を縮こまらせて気まずそうに下を向き、ケイトは眉間にシワを寄せてまた、首を傾げる。
K「中にいるんだろ?用があるから退いてくれる?」
ケイトがそう言っても男達は動くことはなく、申し訳なさそうな顔をするばかり。
K「いい加減に退かないとマジで……」
ケイトが怒りを込めた声でそういうと男達は慌てて目を合わせ言った。
「ジニさんはお取り込み中です!!!!」
K「お取り込み中?」
ケイトはそう言うと男達を顎で退かせてそっと扉に耳を当て、片眉をピクッと動かすと私の手を引いたままその場を離れる。
K「ジニさんに終わったら連絡してって言っといて〜」
「かしこまりました!!」
そんなやり取りを私はただぽかんとしたまま見つめて訳もわからず、ケイトに手を引かれてヨタヨタとついて行く。
T「ねぇちょっと!ヨナは!?」
K「はぁ…お取り込み中なんですよ…今…。」
T「お取り込み中って!?えぇ!?まさかヨナとジニさん揉めてる!?」
気絶してたヨナが目を覚ましてからもしかして車の傷のことでジニさんと喧嘩になった?
どうしよう…私のせいなのに…
焦る私はケイトの手を振り払い走ってジニさんの部屋に戻ろとすると、ケイトに後ろから抱きしめられて私は身動き出来ない。
T「離して!ジニさんにちゃんと説明しなきゃ!!」
私は必死でケイトの太い腕を掴むが全然動かない。
すると、ケイトは笑いながら私の耳元で言った。
K「今、あの部屋に飛び込んだら…ふたりの邪魔するのはテラさんですよ?」
その言葉を聞いて俺はピタっと動きを止めケイトの方を振り返る。
K「たぶん今、1番気持ちいいところだと思うのにテラさんのせいでふたりは寸止めになっちゃいますね…あの喘ぎ声だと。」
T「あ…喘ぎ声?ってまかさ…ヨナの身体で車の傷の弁償を……」
私の付けた車の傷のせいでヨナがそんな目にあってしまっているのだと思うと、生きた心地がしなくて目眩がし足元がぐらつく。
K「はぁ?んなわけないでしょ。あの喘ぎ方はお互いに気持ちよくなってる感じだったから目を覚ましてからいい感じになったんですよ。にしてもあの奥手なジニさんがヨナさんとヤッちゃうなんてね〜」
ケイトはニヤニヤしながら自分の顎を撫でている。
T「ヨナがそんな付き合ってもない男とするわけ…」
K「ないとでも言うんですか?俺たちだって付き合ってもないのにキスしたのに?」
T「そ…それは…」
K「俺たちもする?部屋なら空いてますよ?」
ケイトはそう言って重厚な木の扉を開けると、私を中に引き入れセンサーで付く間接照明に照らされながら私はそのままケイトにベッドに押し倒された。
つづく
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