夢の終わり
「菱田さんそのまますべりこめ!」
八番バッターの上宮がネクストバッターズサークルを飛び出して指示を送る。
康太は指示通りにスライディングを始めた。その時、キャッチャーが急に康太の走路上に体を入れてきたのだ。「まずい」康太がそう思った時にはもう遅かった。両者はそのまま激突しキャッチャーが康太に覆いかぶさるようにのしかかってきた。
ぶちっ。
鈍い音が聞こえ、数秒の間なにが起きたのか分からなかったがすぐに右足に激痛が走った。
「ぐあぁぁ」
真っ暗だった。汗が目にしみて目を開けられないわけでもないのに康太は、目を開けることが出来なかった。駆け寄ってくるチームメイトの心配そうな声と、季節外れのセミの鳴き声だけが虚しく鼓膜を揺らし、頭がい骨を振動させる。「やめてくれ、やめてくれ」そう叫ぶにはあまりに残酷すぎた。
すぐに医務室に運ばれ、応急処置を施した後病院に直行した。右足首靱帯断裂。そう診断を受けた時、悟ってしまった。
勝負の世界に長くいるからよくわかる。これで夢は断たれたも同然だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます