ゲームをしよう、とそいつは言った。真っ白い部屋の中で
@nanami-7733
梶原遙人の場合
「ゲームをしよう」
そいつはそういった。真っ白い部屋の中で。
部屋の中には一段高い台の上に設置された横長の机に沿って横に並んだ背もたれの高い椅子に座っている人が五人。
五人とも何やら真っ白なガウンのようなだらっと裾の長い服を着ている。
髪も白くて長いが微妙に長さが違うようだ。
しかし、顔は五つ子かとおもうほどよく似ている。
そしてその机から少し離れて俺を含めてゆるく弧を描くように設置された丸椅子に座っている人が五人。
俺はいつこんな部屋に来た?
思わずキョロキョロと部屋の中を眺めると、隣の椅子に座っている女性と目が合った。
俺が右から二番目
一番右に男性。
その隣に俺がいて、中央に女性。
その左に子供?女の子かな。
一番左端に女性。
こちらの五人は全員そわそわしているし、女の子は席を立つと中央の女性の方に歩いていって抱きついた。
この二人は親子らしい。
「あなた方は?そしてここはどこですか?」
右隣の男が質問する。
それに対して、真っ白い男たちの右端に座る男が説明をはじめた。
彼らは世界の創造者でその役割を与えられた者は他にもいるらしい。
その中の一人が俺たちの宇宙の管理者で、そいつは一つの研究をしていた。
人間の研究だ。
そして、人間の形質を研究する中で突発的に人を殺したくなるという因子は何かという研究を最近始めたらしい。
そして、その創造者は突発的に人を殺したくなる形質を精製することに成功して、それが本当に正しく抽出されたかを試すために実験的に一人の男にその精製物を投与した。
結果、その男は突発的に人を殺したくなり、殺されたのが俺たち五人らしい。
俺たちは全員ある町のショッピングセンターの外を歩いていた。
ショッピングセンターから出てきた人もいるし、これから入ろうとしていた人もいるし、たまたま通りかかっただけという人もいたが、共通しているのは五人全員車にひかれたと言うことだ。
その因子を植え付けられた男は隠れて犯罪を犯していた男で、倫理観は欠落していたが、殺人をするほどの度胸はなかった。詐欺師だった。
とはいえそいつの詐欺で自殺した者も何人が出ており、この際死刑になってもらおうと選ばれたと。
ただ、その実験のために死ななくてもよいはずの人が五人も死んだ。
その五人を持て余した地球宇宙世界の創造者が、五人の人を他の世界に配布すると言い出した。
他にも人を研究する世界はあり、そういう世界にばらまいて何が起こるかを見てみようという試みだと。
それに乗ったのが目の前にいる五人の創造者だという。
そういうと俺たち五人の目の前に白い封筒が出てきた。
ご丁寧に母親の膝の上に座っている女の子にはその手の真上に、母親の方には母親の目の前に。
こうなるとこの封筒が誰宛のものかを間違える者はいない。
ただ、かなり厳重な封をされていて、開けていいのか少し戸惑った。
全員が顔を見合わせて他の人の動きを見ていた。
「その封筒の中には君たちそれぞれにとって最上と思われる世界の名前が書いてある紙が入っている。ただ、それぞれ別々の世界に行ってもらうことになる。五つの世界はそれぞれこう呼ばれている。
灼熱世界
凍結世界
温暖世界
貴族社会
混沌世界
その封筒の中の世界に行くのであれば、そのまま行かせてあげよう。
ただ、他の世界に行きたいのであれば、我々とゲームをしよう。
ゲームに勝ったら好きな世界に行かせてあげるよ」
この封筒の中に俺にとってベストな行き先が書いてある?
温暖世界だといいな。
混沌世界ってどんなだ?
貴族社会は面倒くさそうだし、庶民になったらどうしたものか。
灼熱。熱そう
もう一つなんだっけ?氷の世界だったか?なんか寒そうだな。
「封筒を開ける前にいくつか質問してもいいですか?」
一番左に座っている女性がそういった。
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