第10話 迷える羊は街の樹海にって気分

ハッキリいって、よくこんな所で占いをしているというか、

仕事をしていると思う。


気を抜くと、

怪しげな露店や

ホームレス的なおじ様なぞが、

1月の寒空の下を

歩いてたりする。


けれども、此処程安心な場所も

ない気がする。

前後ろを気にしながら歩く先に、

赤い丸電球が見えた。


R先生が占う場所は、

なかなかデンジャラスな地域の

交番の2階。


迷うと、

独特の匂いがする場所に

出てしまう地域。


普通、街の交番といっても

常駐していない場所もあるのに、

先生の下の交番は、

2名体制の24時間交番。


何より緊急出動が多い為、

お巡りさんの経験値が半端ない。


ここ、日本?と思うタレ込み?

が無線や付近の住民から入って

くるのだ。

という、デンジャラスな地域。


なのにゼロ磁場と言われている。

真意は分からないけれど

R先生が居てるということは、

そういう事なのだろう。


ただ丁度、目の前の道が

古くからの街道になっている。



2階と言ったが

高さは3階はあるだろう、

長くて

入り口が厳重な階段を登ると、

カオスな階に付く。


プチゴミ屋敷まではいかないが、

雑多な中を進むと、

犬の鳴き声が聞こえてくる。


R先生は、何故かブリーダーだ。


しかも

年がら年中

おでんを炊いている。


謎。


わたしが知っている

他の先生なんかは、

高級住宅街の一室で、

代金は決まっていないという人が

いてる。

帰りにある

壺に心付けを入れるシステム。

何でも財界人も来るとか

なんとか。

そこのお手伝いさんが

話していた。


なのに、R先生は明朗会計。

初回4000円。

以後1000円。


なんでも金欲に走ると、

力が衰えるらしい。

なので、ブリーダーの傍ら

占うというから、

因果な力だなと思う。


ほとんどの人が2回

占ってもらうと大体終わる。

というのも、

人の人生なんて、

そうそう変わらないそうだ。

よっぽどピンポイントで

観て欲しいなら別だが。


というわけで、

カオスな部屋で

R先生の前に、わたしと妹が

座る。


ちなみに、こうして来れない時も

ある。

以前アポを取ると、

R先生が腕を骨折していて

占えず、

他の占い師を紹介してもらうも、その人も体調不慮を

起こしてしまい、

占うのに半年かかって

結局R先生が観てくれた

経緯がある。


なかなか、

わたしも難儀な体質なのか。


さてさて、

出来るだけ、占って欲しい事を

箇条書きにして、R先生に

渡してみる。


「置いておいて、いいんじゃな

い?妹さんが将来、何かあって

帰れる場所がある方がいいし。」


「あ、妹さん富士山の頂上にいる

みたいな人だから、結婚しない

わよ。なんなら、その家で

何か自分で作ったもの売れば

いいじゃない?その洋服の飾り

とか、貴女がしたの?」


まあ、こんな感じだ。


そう言ってR先生は、

わたしの洋服につけたビジューを

しげしげと見つめる。


ハッキリ言えば、

まるで世間話みたいだが、

この言葉全部が

R先生が見た結果なのだと思う。

全くムダがないのだ。


その事に気が付くのは

後になってから。

このことか?!ってなる。


だからと言って

占ってもらった時には

分からないとかではない。

ちゃんと、

聞いた事は教えてくれる。

その上で端々に、

聞いてなくても

必要な事を話しておいて

くれるって、感じか。


だから確かに、

妹の将来もメモに書いていた。

なんせ、男っけが無いのだ。

姉としては心配になって、

紹介やら、

お見合いやら、

婚カツパーティーやら

色々したけれど、

本人に興味がある人が現れない。


どうしたものかと、

メモに書いたら、

R先生からの

先程のお言葉。


わたしは、瞬間

スパン!!と迷いがなくなった。


「わかりました!家は置いておきます。もう妹に紹介やお見合いも勧めません!島をアトリエにして

妹のアクセサリー販売のネット拠点にしようと思います。」


もしも置いて置けば、

ゆくゆくは

父から妹に名義が移る。

妹が1人になった時と

言われて、

やはり

少なくとも自分は

妹より早く逝くのだなと

感じる。


そうすれば、

妹は

富士山の頂上ならぬ、

島の家で魔法使いになるの

だろう。


妹を見ると、

何故かスッキリした顔をしていて


R先生のところに来て

正解だったと理解したわけで。


さて、このR先生の所。

何時まで有り続けるだろうか?

と思ったりする。


きっとR先生は知っている

のだろうけれど。


聞きたい事を聞いて

階段を降りると、

下の交番では出動がかかっていた。


R先生は、


「予約は貴女達だけだから、

もう鍵を締めておくわ。」


と、階段の下まで見送りに

来てくれて、

わたしと妹に手を振ってくれる。



「まずは、どう残せるか

調べてみる。もしかしたら、

ゲストハウスとか出来るかも。」


デンジャラスな地域に、

緊張しながら歩くも、

わたしは妹に話してみる。


「でも、先に名義変更なんじゃ

ないの?頼む所、まだ見つから

ないって、おねえ言ってたし。」


妹は相変わらずの感じ。

さすが富士山の頂上の住人。

いや、樹海が富士山にあるから、

ここも似たデンジャラスゾーンか。


なるほど、

中央構造線のゼロ磁場の吹き出しと引き込みとの関係が

ここにあるのかもと

妹と周りの風景を同時に

目にして思ったりする。


なら、このカンも正解なはず。


「それも、R先生と話していて、

閃いた。方角から探す!!」


人の力で遣り尽くしたら、

ここは神頼みに限る!!


途端に、

ひどく強い風が吹いて


雪が空から落ちてきた。

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