第18話 進化

「ねえ、昨日は惑星ヴァイに行って来たんでしょう?」


アキがそう言いながらシンの目を覗き込む。


ついこの間全ペコ人に対して視覚を接続コネクターとして脳(デバイス)内の記憶ストレージの共有が出来るようになるアップデートがあったところ。


次のアップデートでは遠隔でアカシック素子で構成されたネットワーク上に直接アップロード出来るようになるだろう。


ペコ人進化プログラムが連合との協約の一部として施行されつつある。


間もなくネオテニー(幼形成熟)化のための遺伝子因子の活性化も行われるだろう。


「進歩と進化って全然違うんだよ。」


ピータンが説明してくれる。


「進歩ってのは今の人種そのままなんだけれど、多分ペコ人はそのままでは第4種知性体になる事はない。」


「脳のキャパシティもそうだし、反応速度も遅いからそんなにたくさんの情報を処理することが出来ないんだ。」


ストレージとクロック数の事を言っているのかな?


「で、遺伝子を操作して変異させるんだ。遺伝子数が変化して新ペコ人になるって事で人種が変わってしまうんだ。」


「圧倒的なスペックの差が出来るよ。」


アウストラロピテクスやピテカントロプスエレクトゥスみたいに変化しなかった旧ペコ人はやがて淘汰される。


進化って人間じゃなくなっちゃうって事。


淘汰されるっていうのは歴史上では旧人類は新人類に食べられちゃったみたいだけど。


進化って言うのは子孫から子孫へと長い長い年月をかけてゆっくりとゆっくりと変化と淘汰を重ねていくものだと思っていた。


もしかしたら人類は遠い過去にも異星人の干渉を受けて進化して来たのかも。


ピータン達はそんなに悠長にしているつもりはないようだ。


「アキはいつもは何をしているの?」


既にこの時期には声を出して会話をする必要はなくなっている。


脳内の開示したい情報はパスを開くだけで一瞬で送信出来る。


それでも会話をするのは脳内のイメージを言語化して整理が出来るし、何よりアキの声が聞きたいからだ。


「沢山のアーフや人間が図書館にいるわ。私も図書館で本を読んでいるの。」


まだデジタル化されていない図書というのがかなりあると言うのでみんなで読む事でdata化するつもりらしい。


重複は回避できる様になっているのでロスはないようだ。


視覚情報や音声情報はテキストデータに変換されてストレージに蓄えられてネットワーク上にアップロードされる。


そしてさらにアカシック素子に変性されて宇宙中で共有されるようになる。


この情報の蓄積に何の意味があるのかはわからないけど何となく大切なことのように思ってしまう。


これらの事が終わって仕事が全てアーフやAIで賄われるようになったら人間は何をすればいいのだろう?


答えは目の前で歩きながらクレープを食べているんだけど。


ピータンって最近色んなものを積極的に食べるね。










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