第16話 星間防衛線

「あれで終わりなの?」


モニターで一部始終を見ていたシンがピータンに聞く。


「あの周辺の文明が変化を観測しただろうからしばらくはいろんな種族がやってくると思うよ。」


「友好的なのもいるかもしれない。」


「友好的なのは当分は連合の種族だけでいい。中途半端な奴らに来られても面倒くさいだけだよ。」


モニターに映って手を振っているキミちゃん帝王様はなぜか麦わら帽子をかぶっているし、部下の中には肩にオウムをのせている者もいる。


まあこちらの管制室の中も同じようにコスプレのイベント会場みたいなもんだけど。


ピータンはかなり古いがデスXX総統みたいなカッコしている。


連合では働いている人間ってのは変人だ。


本来労働はアーフやAI端末がするもので人間がするものではない。


ピータンや他の人間のクルーにとっては遊びなのだ。


「あのアニメの第5話のデータをもってない?」


「コミックの3巻を紙で作って欲しいんだけどどこの省庁が受けている?」


「ペコ暦1980年代のアイドルの歌のデータを入手した。」


まあ、そんな話題ばかりでさっき追い返したツクヴェ星人の事なんかもう話題にも上がらない。


キミちゃん帝王様と対峙していたムトリュ星人の6機の宇宙船とチュルド星人の10機の宇宙船は一見膠着しているように見える。


キミちゃん帝王様は60器の航行器を一方向を開けて包囲するように配置している。


すでにハイパー航法はジャミングしているので彼らが逃げる事は出来ない。


連合の協定に基づいた降伏勧告をしての時間待ちだ。


この間キミちゃん帝王様はわざと彼らの武装解除をしていない。


先に手を出させて潰す選択肢を残しているんだ。


高度な知性体って好戦性を失ったりしないのかな?


「高度な文明や知識、知性を持つに至るには長い時間がかかるんだよ。」


ピータンのそばにいたアーフがシンの様子を見て説明してくれる。


「その間その種族が滅びたり滅ぼされるわけにはいかないんだ。だから、多分、好戦的だしとても強いよ。」


チュルド星人の宇宙船が自分を巻き込むかもしれない程の至近距離なのに熱タイプの収束ビームを発射した。


多分ヤケクソ。


ビームはアグウグ帝国の航行器の表面の円周上を滑って元来たチュルド星人の宇宙船を直撃する。


宇宙の船首部分がくちゅくちゅに壊れているけど航行には影響がないようだ。


帝国は再度降伏勧告をする。


言葉は通じているはずだが降伏の意味を理解しない種族もないわけではない。


この間にムトリュ星人の宇宙船は連合との不可侵条約を締結して撤退して行った。


そうこうしている間にもいくつかの種族が周辺に来ていたがしばらく状況を観察すると危機感を持ったのか早々に撤退して行った。


辺境の星として誰にも相手にされなかった頃は宇宙の中で稀有で孤独な生命体だと思っていたのに。


降伏勧告の期限を超えるとチュルド星人は狂ったように全機でビームを乱射するけど全くの無駄。


10機のチュルド星人の宇宙船は収束するように縮んで消えた。


「どうなったの?」


「拿捕したんだ。次元カプセルに収納したんだよ。」


ポケxンボールみたいな?


残念ながらチュルド星人は降伏するという概念は持っていなかったようだ

殲滅するのは簡単だが星間連合の協定では許されない。


面倒くさいけれどチュルド本星との交渉に切り替えるらしい。


「このぐらいの種族いくらでもいるから面倒くさいんだけどなー。」


などと言いながらキミちゃん帝王様が悪い顔をして笑っている。


「ふっふっふ。」


こわ。

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