第5話 アグウグ帝国の急襲

シンは家の近くの公園のベンチにラドと並んで座っている。


暑くもなく寒くもない気温。うっすらと雲は出ているけれど太陽が眩しくなくて丁度いい。


さっき本屋さんで買って来た漫画を読んでいる。

12巻まで見つけたので大人買いして来た。


ただ読むだけならネットでダウンロードすればいいんだけどコレクションとしてはやっぱり紙の本かな?


紙とインクの匂い、実体があって本棚に並べられて....変な満足感があって。

うふふ。


11歳の子供が大人買い?


でもシンは自分のお小遣い口座にいっぱいお金を持っている。


広告収入が入る動画配信や父名義でやっている株や為替の取引を自動化しているので勝手にお金が増えちゃう。


まだ初めてまもないので小さな一戸建ての家が3件程買えるぐらいしかないけど。


ラドはジーッと漫画を読んでいる。

なんかすごく集中している。

面白いのかな。


なんだか急に薄暗くなる。

空を見上げるとマーブリングしたみたいに色とりどりの巨大な球型未確認飛行物体が空を覆っている。


大きい。


その下を国際線の旅客機が飛んでいるから1万m以上の上空に留まっているみたいだけど殆ど地平線まで覆ってしまうぐらい大きい。


そしてその飛行物体と比較するとコバエみたいな小さな......と言っても多分旅客機と変わらない大きななんだと思われるものがぐるぐる旋回しながら飛んでいる。


自衛隊のスクランブルがやって来る。

勇敢すぎる。

絶対怖いに決まっている。


ポンっと目の前にラドと同じぐらいの女の子が現れる。


ピンク色のワンピースに金色の冠とマントを着ている。


変なセンス。


「え?これ可愛くない?」


女の子がキョロキョロして言う。

ちょっと涙目。


少し遅れて公園いっぱいにピンク色のワンピースを着た女の子が現れる。


何十人もいる。


「おまえ帝王様に対して失礼なこと考えただろ。くすぐるぞ!」


「ごめん、とってもかわいいよ。」


シンが言うと気を取り直した様にその帝王様はにっこりと笑う。


うん、確かに可愛い。


心が読めるのか帝王様の機嫌はさらに良くなった様子だ。


で、くすぐるって何?


「罰じゃ。それ以上の事は惑星間協定で禁じられているのじゃ。」


惑星間協定?


「そうじゃ。この辺境惑星ペコの時間に換算するとおよそ5万年前に全宇宙の文明レベル第4種知性体以上の種族間で締結されているのじゃ。」


「侵略、攻撃、希望されない干渉などは協定違反なのじゃ。」


「本当は母船を見せて威圧してしまう事も不味いんだけどかっこいいでしょ。」


後から来たピンクの子が話す。


帝王様はラドに近付く。


ラドはジーッと帝王様を見る。


「「それ」はラドと言う名前だったのか?ラドはなぜペコ人と一緒にいるのじゃ?」


「ラドは見る者、観察者。今はシンといる。」


「ではラドはわしがペコ人と関わることに反対しないのじゃな。」


「ラドの問題ではない。」


そう言いながらラドはシンの手を握る。

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