決意
高松美術館の最寄りのセブンイレブンに集合した。チキンだけ買って食べた。そのまま全員で美術館のそばまで歩く。美術館が見える場所に来たら路地裏に入る。昼なのに薄暗いその場所で、榮倉を取り囲むように並んだ。榮倉の言葉を誰もが待っている。
「全員ナイフはもってる?」
榮倉遼一の言葉に誰もが一様に頷く。
「作戦は」
「作戦なんかないよ。美術館内にいる人をなるべく刺すんだ。一人につき一人刺せたら望ましいね」
「そうだった」
長崎が頭を掻いた。
「新庄と遠山は入り口に待機してて。バットは流石に持ち込めないからね」
沢村が俯きながら小刻みに肩を震わせている。榮倉が沢村の肩に手を置いて、微笑する。
「落ち着いてね」
あくまで淡々と榮倉は喋っている――それに誰もが無言で同調する。気味が悪いほどに誰もが落ち着いている。
「市長――岡本さんは確実に殺すこと。他は好きにしたらいい。誰でもいいからたくさん殺すんだ。いいね?」
これから殺す人間にさん付けをする榮倉遼一――気味が悪かった。寒気がした。
「本当に、やるんだよな」
「馬鹿、当たり前だろ!」
中島に対して遠山が強い口調で訴える。
「殺しまくってわからせてやるんだ。そうすれば世の中のクソ共も気がつくだろう。この世は地獄だって。これはおれたちを無視してきたことにたいする罰なんだって」
直前のボウリングで口走ったものと殆ど同じ文言。遠山の目――焦点が合っていなかった。失うものを失ったものの目だった。
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