第2話:スイカの女神とメロンの王女
ドリアン。
『果実の王様』とも称される栄養満点で異臭を放つトゲトゲの果物が、猫みたいなやつの頭を直撃している。猫みたいなやつは、動かなくなって、地面に転がっていた。
俺はパニックになった。
「何だよ、これは! どうして襲われてるんだ!」
俺はスイカを抱えて、思わず、森の中を駆け出す。
しかし、そのとき、反対方向から走ってきた人影と正面衝突してしまう。我知らずに、身構えたが、出てきたのが美しいドレスを着た金髪の少女だったので緊張を解く。
彼女の美しさに、一瞬、にやけながら眺めてしまったが、すぐに自我を取り戻す。
「あ、あなたは?」
「わたしはメロン王国の王女、メロンナですわ。助けてくださいませ! ドリアン王の兵士たちに追われています!」
なるほど、メロン王国の姫メロンナと名乗るだけあって、全身はメロン要素でいっぱいだ。ドレスは、メロンの絵柄で刺繍がほどこされており、靴もメロンの皮で作られているようだ。何より目を引くのが、メロンの中身をそのままくりぬいて作ったらしき王冠である。そういえば、メロンの芳香がまわりに漂っていた。
しかし、話している余裕などなかった。
その後ろから、鎧を着た兵士たちが現れたのだ。鋭いトゲで覆われた鎧で、ドリアンの皮を何個も組み合わせて作ったもののようだ。兜もまた、ドリアンそのものだった。見るからに、ドリアン王の兵士たちに違いない。
「そこだ! メロンナ姫を捕まえろ!」
兵士たちは弓や剣――これまたドリアンで作られている――を構えて、メロンナ姫に襲いかかった。
「やめてくださいませ! 私はただ自由に生きたいだけですわ!」
メロンナ姫は必死に抵抗したが、兵士たちには敵わなかった。兵士たちはメロンナ姫を捕らえて、縛り上げた。
「よし、これで任務完了だ。ドリアン王国に連れて帰って、処刑してもらおう。」
兵士たちは笑った。
俺はその光景を見て、怒りに燃えた。
「何だよ、これは! どうしてメロンナ姫をそんなひどいことするんだ!」
俺はスイカを抱えて、兵士たちに向かって走り出した。しかし、兵士たちは俺に気づいて、言った。
「おい、あそこにも敵がいるぞ! 奴も捕まえろ!」
兵士たちは俺にも弓や剣を向けた。
「くそっ、どうしよう……」俺は逃げ場がなくなって、絶望した。
そのとき、スイカが俺の手から飛び出した。スイカは空中で回転しながら、兵士たちに向かって飛んでいったのだ。
「えっ?スイカが……」
俺は驚いて、スイカを見た。すると、スイカは兵士たちの頭に当たって、爆発した。爆発したスイカは果汁と種と果肉に分かれて、兵士たちをびしょ濡れにした。
「うわあああ! なんだこれは!」
兵士たちは悲鳴を上げた。スイカの種は鋭くて硬くて、兵士たちの顔や体に刺さって、血を流させた。
「いたあああ!助けてくれ!」
兵士たちは苦しみながら倒れた。
俺は信じられない目で、スイカの力を見た。
「すごい……、スイカが……」
俺は呆然とした。スイカはまだ空中で回転しながら、残った兵士たちに向かって飛んでいった。
「やめろ! やめろ!」
兵士たちは逃げ惑ったが、スイカの攻撃から逃れることはできなかった。スイカは次々と兵士たちの頭に当たって、爆発した。兵士たちは全員倒れて、動かなくなった。
スイカは全ての敵を倒した後、俺の元に戻ってきた。スイカは元の形に戻って、俺の手に収まった。
「おい……スイカ……」
俺は呆れながら、スイカを見つめた。すると、スイカから声が聞こえた。
「ごめんなさい。私があなたをこの世界に連れてきてしまったのです。私はこの世界の女神であり、スイカの姿であなたの世界に現れました。あなたが種で窒息しようとしたときに、私は反射的にあなたを守ろうとしてしまいました。その結果、私とあなたはこの世界に転移してしまったのです」
俺は驚いて叫んだ。
「女神? スイカが女神? いったい、どういうことだ?」
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