第2話 見知らぬ優しい人
車に乗って着いた場所は場違いな空気の漂う高級住宅街。目の前には真新しい一軒家。ついこの前完成したみたいなキレイな建物。
「お姫さん。行くよ?」
「あ……」
そんな場所に遠慮なく入っていくこの人は車に乗ってから私の手を離していない。車に乗ってから色々聞きたいことはあったのに手を握られているのが気になって結局何も聞けなかった。
キレイな建物に入っていくと、落ち着いた雰囲気の世界が広がっていた。
目に入るものすべてに見慣れない私は、異世界に連れてこられた気分だった。
「ここがお姫さんの新しい家だよ」
変わらず私の手を握ったまま微笑んでいるその人は、この場所を私の新しい家だと言った。
「ここが、私の?」
「うん!あ、お姫さんの部屋はこっちだよ」
私の手を引いて部屋の紹介が始まった。
終始戸惑っている私と、ずっと微笑んでいるその人。はたから見ればとても奇妙な二人だ。
「うん。これで全部かな。一通り案内はしたけど、なにか聞きたいことはある?今じゃなくても何かあったいつでも何でも言っていいからね。お姫さん」
ただ一人満足げなこの人に少し苛立ちを覚えたけれど、それよりもまず今この状況をきちんと把握しなければと、苛立ちをグッと抑えて
「あなたは、誰ですか」
私はようやく言葉を口にすることができた。
「あ!ごめんね、お姫さん。俺、君に会えたのが嬉しくて何も説明せずに連れてきちゃった。俺は一之瀬。お姫さん、これからよろしくね」
その日、彼の笑顔が崩れることはなかった。
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