精霊ですから
非常にまずい状況だというのは、皆分かってくれるとは思うんだ。成人男性が意図せず子どもの裸を見るというのは他人であるだけで、死にかねない。もちろん、社会的な意味でだ。所で僕は、自他ともに認める7歳の男の子だ。こんな事をいうのも何だが、このーー軟腕では箸すら持てそうにない。冗談だよ。ちょっと重いくらい。そんな子が見たって大人たちは何も感じないだろう。本来なら、ただ、ここは異世界でちょっとだけ、元いた世界と違う所がある。「聖痕」だ。選ばれし者には誰だってあるし、もちろん僕にだってある。大体は、それが産まれつきのものか、後からつけたものかで別れるよ。僕は後から、火で炙って腹の脇あたりにつけた、それっぽく出来たよ。三日三晩寝込んだ。初めて誰かを殺したいと思ったね。
おっと、話が逸れたね。別に見られても問題ないだろうって?ここで問題なんだがこの世界の住人は生まれつき「聖痕」を持っている。持ってないのは、「魔族」と呼ばれる者たちだけ何だ。
見間違えじゃなければ、この女の子に、聖痕はない。聡明な、あなたなら分かるだろう。今どんな地雷を踏んだのか分からないということを、唯一の救いは、多分この子の関係という事だ。
そして、思い出して欲しい。私は異世界人で言葉はまだ拙い。ここの家の使用人らしき人は頭を下向きにして極力目を合わせないようにしている。そして、私はこの家の主に自由を渡されており、人見知りな私は精一杯気持ちを込めて、尋ねた。
トイレの位置を、当たり前だ。そこそこ近いとはいえ、遠いのだ。整備されていても、膀胱を責められ続けたんだ。屋敷に着いて、主にあって部屋に案内されて、当たり前だが部屋にトイレはない。使用人らしき人は、言葉で示すのだ。
分かるだろう。道に迷うという事を、漏れそうだよ。いたる所にいるんだから、聞けばいいって、本当にそうだったね。もう、嫌だ。泣きそう。
紅い目には、私が映る。
言い訳を、考えろ、騒ぎを起こさない。語彙力も必要ない、そんな都合のいい言い訳を、状況を把握しろ。
怯えているか?いない。
「誰?」
「こんにちは」
おずおずと、返した。
「こんにちは?」
「こんにちは!」
声が大きかったらしい。
女の子の周りでちろりちろりと気温が上がる。ここが風呂場だとか、関係ない。歪みが異様に高まり、僕は多分このまま焼け死ぬ。「魔族」には、一部聖痕に関係のない自然由来の能力を持つという。一部地域では神の使いとして崇める所もあるという。「ネア様の使いです。」
少し弱まった。
「神様なの?」
「いいえ、悪い子を良い子に変えるためにきました。」
何故彼女はこの広い豪華な風呂場を一人で使えて、そこに誰一人使用人はいないのだろう。何故父親らしきものは私に求めたのだろう?多分、そういう事だ。
「僕も同じ。」
優しく、雰囲気をつくる。あの父親から生かされた。この、顔と声で、極限まで求めるように、奈落の底から響くように。
「僕も同じ超能力を使えるよ。」
うそをつく。ずっと前にもこんな嘘を着いた気がする。
いつだっけ?大切だった、記憶が、ない。本当に自分は35歳?
「こころが読めるの。だから、大丈夫。安心してーー僕は、神の使いアルバノ。皆はアルって呼んでる。」
「精霊さんなの?」
もう気温に異常はない。他の使用人はご愁傷さま、多分僕は、生きれるよ。この家の実権は彼女の祖父だろうか。きっと大丈夫。優しい音色で、
「うん。」
僕は、答えた。
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