君は僕を裏切らない
羽弦トリス
第1話登場人物
ここは、名古屋市港区の「愛知カーサービス株式会社」。
主に、中古車を輸出する前にメンテナンスと清掃、殺菌を行う会社。
ここでは、輸出する際に、カーナビなのどの付属品のチェックと、トランクに積まれた、オーディオ類、タイヤのチェックをして、書類に残す。
もちろん、書類は外国に渡すのだから英文で。
その、検査課である係長の有友大輔(44)は、この辛い課を嫌ってなかなか人が入らないので、役職者なのに現場に出ている。
彼は、身長は175だが、体重は100キロである。
しかし、妻帯者で子供が2人いる。
朝、出勤して更衣室でスーツからツナギに着替えていると、
「おっす、有友君」
声の主は、同期で同じ課の崎誠(44)であった。
彼は、主任である。有友は作業は手伝うが、仕事を指示するのは、崎であった。
「おっつ、崎君。今日は何台?」
と、チェックしなければならない中古車の台数を尋ねると、
「500だよ。俺たち中年だから、若い衆に頑張ってもらわなきゃ」
と、にこやかな表情。
すると、入社5年目の
「おはようございます」
「おっす、兼古」
「おはよう、兼古君」
「今日は500だ。頑張れ。夜は係長の奢りだら。酒飲な」
「おいおい、崎君。勝手に決めるな!……まぁ、飲みたいな」
兼古はスラックで半袖シャツだったが、その浅黒い腕や胸はボクサー体型で、有友は自分の太鼓腹を擦りながら、こんな時代もあったな。と、思った。
検査課には後2人いる。
入社2年目の柴川さくら(23)と、入社4年目の
彼女らは炎天下のヤードに並ぶ、サウナ状態になる車内のチェックで日焼け止めクリームはするが無駄な抵抗である。
メイクをしても、額から汗がだくだく流れるので、最小限のメイクしかしない。
柴川なんかは、眉を書いただけだ。
5月の連休中も仕事であった。National Holidayは世界に通用しない。名古屋港に元旦以外は着岸する。だが、彼らには休日加算が付く。
しかし、係長の有友は役職者なのでそれが付かないのだ。
だが、やはり他の連休中より給料は遥かに多いので、否が応でも飲み会は有友の奢りになる。
崎が過去に1回、皆んなを奢りで酒を飲ませたが、場末の立ち飲み屋だった。
朝、崎主任が作業行程を説明して現場に向かった。
5月となると、中古車の中はサウナ状態。水没車は、彼らは慣れたが物凄く臭い。
150台過ぎたところで、10時の休憩で有友は兼古に1000円札を渡して、一人一人に何を飲みたいか聞いてから、自販機にむかわせた。
事務所の冷房が生き返る。
有友と崎は喫煙室でタバコを吸った。
「崎君、こりゃ、5時前には終わるね」
と、煙を深く吸った。
「でも、有友君は係長だから、定時まででしよ?」
「うんにゃ、いつもサービス残業してるんだから、早くアガるよ。他の連中が文句言ってたんだけど、お前ら検査課にくるか?と、言ったら黙ってしまったよ」
「俺たち、エラい貧乏くじ引いたよな」
「今日は、飲ませるから」
すると、喫煙室のドアが開いた。
兼古だった。彼は有友にコーヒーブラック、崎に微糖、そして自身はコーラを手にしていた。
兼古も゙タバコを吸い出した。
「兼古君、今日は定時より早くアガるから、裏門を出るんだよ!正門を使うと警備員がいるからさ。アイツら、総務課の番犬だから」
兼古は喉を鳴らしてコーラを飲んで、
「分かりました。崎さんの後を付いてきます。柴川と、小豆沢はどうしますか?」
そう、兼古が崎言うと、
「大丈夫。彼女らは慣れてるから。失敗しないだろう」
しばらくすると、5人はヤードに向かった。
16時15分。
作業が終わった。男性陣は着替えて、裏門で女の子達を待っていた。
不安に思って、階段を上ると柴川と小豆沢は、総務課課長の柴垣に説教を受けていた。
「お前ら、定時まで働いてやっと給料が発生するんだよ。誰だ!アガって言いと言った馬鹿は?」
柴垣は怒り狂っていた。
「オレだよ!柴垣。お前、一週間、検査課の仕事してみろよ!」
「やはり、有友か!お前、甘いんだよ。下のもんに」
「だから、お前、来週一週間、検査課の仕事しろよ。オレ達、有休だすわ」
「……そ、そう言う事じゃないんだ。会社員なら定時まで」
「はぁ〜、お前今日は何時出勤だ?」
「8時半」
「8時半?バーカ、オレ達、7時には出勤して仕事の段取りしてんだ。お前らみたいな、ホワイトカラーの仕事じゃないからな。今度、もし早上がりに文句言ったら大久保課長に言って、お前を一週間検査課の体験してもらうからな!」
「……分かったよ」
柴垣は、足早に階段を上った。
これが、登場人物たちである。
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