第32話 アリシア、二の腕をペロペロしたい
現場に到着すると、チビエヴァちゃんたちの歌が聞こえてくる。
半径3mくらいの円状の囲みのようなものが出来上がっていて、たぶんこの中でラダリィがダンスを披露している最中、みたい?
み、見えない……。
チビエヴァちゃんたちの歌声が聞こえてくるだけで……中で何が起きているのか……気になる。
≪映像共有します≫
「エッッッッロッ!」
何、このエロエロ空間は⁉
この囲み、エロエロ結界なの⁉
エヴァちゃんの目の映像を共有してもらって見ると、囲みの中心ではラダリィがエロエロなダンスを披露中だ。それを男たちが食い入るように見つめているね。うん……一部の視線がチビエヴァちゃんに注がれているのは見なかったものとする!
≪どうやらラダリィさんのスキル外スキルが発動しているようです。一定のリズムを刻む胸の揺れに、微弱な洗脳効果が認められます≫
そ、そんなことある⁉
いやまあ……一生見ていられるけれども……。
≪サブリミナル効果と似た現象と考えても良いかと≫
胸の揺れにサブリミナル効果……あ、これもエヴァちゃんの仕業でしょ! 騙されないんだからねっ!
≪何のことでしょうか?≫
あー、とぼけてる!
だってあれでしょ。チビエヴァちゃんたちの歌とラダリィの胸の揺れ、それでサブリミナル効果が出るように調整しているでしょ!
≪さすがアリシア、底がしれない≫
ごまかそうとしてもダメですからね。
すぐそうやってズルをしようとするんだから。
≪この世界ではサブリミナル効果を使用した宣伝は禁止されていません≫
まあまだ規制されていないっていうのが正しい認識なんだろうけど。小銭稼ぎくらいなら許されるのかな……。でも危険だから、あんまり乱発しないようにしてね。変な方向に洗脳が進むと、内乱や他国との――。
「アリシア、ナタヌ様、おかえりなさい」
「ナタヌ、戻りました! ラダリィさんもお勤めご苦労様です!」
「あれ? もうダンスやめちゃったの? もうちょっと見たかったのに……」
エヴァちゃんと話をしていたせいで、ぜんぜん堪能できていないんですけど……。
≪録画はしておいたので、あとでじっくり見てください≫
「ナイスー! あとでじっくり洗脳されようっと♪」
「恥ずかしいのでできればやめていただきたいのですが……」
ラダリィの顔が赤い。
というか、ダンスの直後なので、全身紅潮しているけどね。
汗ばむ肌。惜しげもなく晒されている二の腕が……エロい。ちょっとくらい舐めても罰は当たらない、よね。
「ちょっとラダリィ? なんでエヴァちゃんの後ろに隠れるの……? これからがんばったラダリィを褒めようと思っただけなのに」
「いいえ、けっこうです。アリシアから邪悪なオーラを感じました。それ以上近寄らないでください」
くっ、勘が良すぎる……。
ちょっと二の腕をペロペロしようと思っただけなのに……。
≪そんなにペロペロしたいなら、こちらの腕をどうぞ≫
差し出されるラダリィの腕(偽)。
確かによくできているけれど――。
「そうじゃない……」
オリジナルの腕が舐めたいんだ!
がんばったラダリィからしか摂取できない成分があるっ!
≪ヘンタイ≫
自分でもちょっとそう思ってしまった……。
少しだけ反省します。
でもそれだけラダリィのがんばりが魅力的だったということで……。
≪私にも発汗作用を追加します≫
いや、わたしは汗フェチってわけじゃないからね?
むしろいつでもどこでもさらさらしているエヴァちゃんの腕のほうが好きだよ?
≪発汗を中止します≫
と、ナタヌからの熱い視線を感じた気がした。
「ナタヌ、どうかした?」
「私もここで踊ったらアリシアさんに褒めてもらえますか⁉」
うらやましそうにラダリィのことを眺めている。
ラダリィはラダリィで、その視線にどう反応したら良いのか迷っている様子だ。
「ナタヌも孤児院に行ってがんばっていたでしょう? もちろん褒めるよー。こっちおいで、頭撫でてあげる♡」
わしゃわしゃ♡
≪私もがんばりましたが≫
はいはい、エヴァちゃんもわしゃわしゃ♡
「ラダリィもがんばった。ナタヌもがんばった。エヴァちゃんもがんばった。それで良いんじゃない?」
ラダリィもおいで♡
わしゃわしゃしてあげるー。
って、こなーい! いつになったら懐くのかな……。
「ところでアリシアさん」
「んー、何?」
ナタヌとエヴァちゃんを撫でる手を止める。
「殿下のお姿が見当たらないのですが、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」
スレッドリー……?
そういえば……いないね。
え……いつから……だ?
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