第43話 アリシア、幻のアイドルグループをプロデュースする

「えええええっ! この伝説の4人組アイドルユニットってデビューできないの⁉」


 レインお姉様と同じ(エロい)制服姿のナタヌ、ラダリィ、エヴァちゃんによるアイドル4人組ユニット。

 ダンスミュージックをバックに、ローラーシューズで激しいパフォーマンスを披露するってコンセプトでアイドル界に新風を巻き起こす……予定が!


「あんなに振り付けとかしっかり合わせたのに⁉ もうほとんど完璧なのに⁉ ウソでしょ⁉ マジで言ってるの⁉」


≪残念ながらマジです。明日が『ダーマス』へ向けての出発の日です。お忘れでしょうか?≫


「忘れてないけど! けどー! そんなー!」


 なんで次の夜会『レイン=グレンダン♡スペシャルパーティーナイトvol.2』は3日後なの⁉ なんとかなりませんか⁉ 1曲だけでもお客様に見てもらいたいよー!


「私はアリシアさんの前で踊れたので満足しています! それに、ほかの人に肌なんて見せたくないですし!」


「アリシアの視線が1番いやらしいですけれどね……」


 ジト目のラダリィが、わたしから自分の体を隠すように背中を向ける。


≪ちなみにアリシアのいやらしい視線の65%はラダリィさんに、20%はレインさんに、10%はナタヌさんに、残りの5%は私に向けられていました≫


「違う! わたしじゃない! 誤検知だよ! 絶対アイツらの視線でしょ!」


 と、ステージ後方に佇む男3人衆、スレッドリー、ヤンス、ラッシュさんを指さす。

 みんなのことをエロい目で見ていたのはアイツらです!


「あの方たちは私に興味ありませんからね……」


 そう呟いたラダリィさん。

 流し目でセクシー。だけどどこか少し淋しそう……。


 それがホントに不思議……。なんでだろうね?

 こんなエロい体の女子がエロい格好していたら、ガン見するのが礼儀ですよね? そうだよ、アイツらは礼儀がなっていない! 教育し直さないと! 早くみんなでラダリィの体をエロい目で見よう!


「そうなったらなったで……非常に嫌ですが」


 ラダリィは贅沢だなー。

 じゃあわたしだけでじっくり見ておくね♡


「それも複雑なのですが……」


 良いじゃん良いじゃん! 減るものじゃないんだし♡



「レイン。今日も素敵でやんす。本番は1人で踊ることになりそうでやんすね。大丈夫でやんすか?」


「私は大丈夫よ♡ でもソンちゃんが一緒に踊ってくれたら心強いのにぃ♡」


「おいらがその制服を……? どう……でやんすかね……」


 いや、こっち見るなよ。

 何を「ワンチャン行けるでやんすか?」みたいな目で確認してきてるのさ。行けるわけないでしょ! 1ミリも可能性ないからね? その制服に腕を通そうとした瞬間に容赦なくへし折るからね?


「アリシアは制服……着ないのか? 見たかったな……」


 スレッドリーがステージのみんなとわたしを交互に見て、少し淋しそうにしていた。


「だから着ないってば。わたしはプロデューサーなの! えらいの! えらい人はアイドルを侍らせて接待される側なの!」


 それにわたしがあの衣装を着たら……みんなと胸のサイズがぜんぜん違うことがバレちゃうでしょ!


≪それはみなさんとっくにご存じなので大丈夫です≫


 くそー!

 その偽乳もぎ取ってくれるわー!

 

≪人工繊維でも私にとっては本物なのです。ですが、これはアリシアのために育てたもの。収穫されるなら本望です≫


 いや……ごめんって……。

 無抵抗で差し出されるとさすがに……。

 そういう時は「キャー! やめてー! もがれるー!」みたいな感じで一緒に乗ってくれないと……。


≪キャ~、やめて~もがれる~≫


 大根役者!

 そんな演技じゃ、まだまだ舞台にはあげられませんことよ!


≪修行してきます。せ~の。きゃ~~~~! やめて~~~~~!≫


 良い発声ですね。

 まあエヴァちゃんは、声帯ないんだけどさ。


「わ、私もやります! きゃ~~~~~! やめて~~~~~~!」


 いやいや、ナタヌが叫ぶとシャレにならないって言うか……。門番の人が飛んできちゃうからやめてね?


≪私だとシャレになるんですか?≫


 そりゃロボだからね。


≪人権侵害です≫


 ロボ……人権……。


≪アリシアがいじめます≫


 と、エヴァちゃんがラダリィの胸に泣きついていく。


「きゃ~、やめて~。アリシア、メイドのことを邪険に扱う方は信用されませんよ。上に立つ者として態度を改めたほうが良いです」


 うわ、これ、ガチ説教だ……。


「ちょっとしたじゃれ合いっていうか……。すみません。気をつけます」


 あんまり言い訳しないほうが良さそう……。

 でもそうだよね。

 使用人に対してえらそうにするのは違うと思う。わたしだってそんなことされたら嫌だし。わたし、知らず知らずのうちにえらそうな態度取っていたのかな……。エヴァちゃん、ごめんね。


≪わかればいいんですよ、わかれば≫


 ロボのくせに手の平返しやがって……。この態度……イラつく……。


≪おや、もしかして、またいじめですか? お? お?≫


 くっ……。

 これ、逆パワハラでは?

 ……ガマンガマン。


「アリシア様は今日も底がしれない……」


 ちょっと、ラッシュさん⁉ 今どこをどう見てそう思ったの⁉

 わたしのほうが攻め込まれていたんですけど⁉

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