第40話 アリシア、スークル様と出会う
海岸付近までローラーシューズで街道を滑っていくと、わたしの魔力探知に大きな反応が現れた。
「きっとスークル様ね! 間違いないわ」
魔力の大きさ・特殊性、ともに人族のそれではない。
スークル様と思われる魔力の周りに小さめの反応がいくつか。ワイバーンかソフィーさんたちか。少し離れたところに100以上の魔力反応。こっちは間違いなくワイバーンね。
とにかく先を急ぐ!
即戦闘に参加することも視野に入れつつ、あらゆる防御系・ステータスアップ系のポーションを口にし、ライトサーベルを握りしめる。
待ってて、スークル様!
* * *
「スークル様! ソフィーさん!」
わたしが駆けつけると、ソフィーさんたちはワイバーン軍団と戦闘の真っ最中だった。
「アリシア! こちらの方がスークル様! 結界を張るための時間を稼ぐ必要があるの!」
「わかりました! 全力で加勢します!」
ソフィーさんの一言で状況を把握する。
胡坐をかいて瞑想しているのがスークル様ね。褐色の肌に長い白髪を後ろで束ね……超絶美形男子! あれ? 女神様だから女子……? えっ、でも美しすぎる男子! あれ? でも女神様だから……。
「アリシア、ぼさっとしていないで頼むわ!」
「はっ! 防御フィールド展開します!」
最小範囲に絞って、スークル様を中心に防御フィールドを展開する。
よし、これで上空にいるワイバーンたちは入ってこれないはず。あとはソフィーさんたちが交戦中の……7体か。こいつらを片づければ!
「倒します! みんな一瞬離れて!」
ワイバーン7体をロックオン。出力最大のレーザー照射! いっけー!
無数のレーザーが複雑な軌道を描き、多方面からワイバーンを狙う。
絶対に回避不可能。
ワイバーンたちは回避行動を取るも、広げた翼はレーザーに撃ち抜かれ、一瞬にして機動力を失う。直後、体の至るところに複数のレーザーが被弾。穴だらけになり爆散する。
「ふぅ、全弾命中、と。撃ち漏らしなしヨシ!」
大して強くないね……。これなら上空に待機しているワイバーン軍団も全部やっちゃう?
「ありがとう……助かったわ。空中から強襲されていると防戦一方で困っていたのよ」
ソフィーさんが刀を鞘に納めながら近寄ってくる。
「パーティー構成がちょっと。わたしたちのパーティーは物理攻撃に偏り過ぎなんですよ……。あ、みんなケガは?」
アークマン、エデン、スキッピー。全員無事、かな?
「かすり傷だから大丈夫。やっぱり暴君は強いね」
エデンが無邪気に笑う。
いやね、エデンが未活性のスキルを早く使えるようにすれば、もうちょっと遠距離の敵にも対応できるのよ?『コールドアロー』とか『コールドブリザード』とかね?
「つまり修行が足りない!」
「つまり、とは……」
アークマンがスキッピーの膝のケガを直しながらチラリとこっちを見てくる。
「なんでマッツを伝令に置いてきたのかってことよ!」
唯一攻撃魔法が使えるメンバーを伝令にするなんてね。
「それは――」
「あ、そんなことより! スークル様!」
防御フィールドの中心で坐したまま、身じろぎ1つされていない。
やっぱりお美しい……。好き♡
「アリシア、近づかないの。集中して魔力を練られているのよ」
「そう、なんですね……」
国を守る結界か……。さぞかし強力なんでしょうね。
大穴が開いている結界の綻びを観察してみる。
これはだいぶ堅そう……。わたしの防御フィールドとは根本的な造りが違うね。組み立てられるかな……。いやー無理っぽい。わたしがあと10人いたら何とか? うーん、『並列思考』とか便利なスキルがあったらなー。
あれ? でも、こんなに強固な結界があんなに弱っちいワイバーン破れるかな。10000体いても無理そうなのに。
『結界を破ったのはワイバーンではない』
ん?
『オレの名はスークル。戦いの女神・スークルだ』
キャー! スークル様! やっとお会いできた! 光栄でございますわ!
『うむ。お前の話はほかの女神から聞いていた。先ほどは感謝する』
滅相もございません! スークル様のお役に立てるなら靴でもなんでもお舐めします!
『靴は別に……。魔力を練るのにあと数時間はかかる。この防御フィールドとやらの維持と、露払いを頼めるか?』
合点承知の助でございます!
数時間でも数年でもいくらでも維持しちゃいますね!
じゃあ、急いで外のにっくきワイバーンどもを滅ぼしてきますね! なんなら種族ごと滅ぼしますか?
『それは生態系が壊れてしまうから……。外にいる分だけで頼む』
敵なのにお優しい! こんなに優しくてかっこいい女神様のことと筋肉ゴリラなんて呼んでるのは誰なのかしら!
『うむ。筋肉が好きなら、手助けの礼代わりにあとで見せてやろう』
キャー! 筋肉大好きー! 楽しみにしてます♡
「さ、みんな! 今のうちに外のワイバーンを消滅させに行くわよ!」
「わざわざ? この中にいれば安全なんじゃ……」
エデンがめんどくさそうにこちらをみてくる。
「スークル様がそれをお望みなのよ! まったく、あなたって人は……怠惰は罪よ⁉」
「ソフィーさんもスキッピーもさっさと立ち上がる!」
なんでみんな休憩モードに入ってるのよ!
アークマンだけはやる気ね……。まあ、助かるけど……アークマンは攻撃スキルないよね。スキッピーもか。いや、ソフィーさんもエデンも近距離攻撃のスキルしかないんだった。
「うーん、なんかやっぱりいいや……。みんな座って休んでて。わたし1人で行ってくるわ……」
やっぱりこのパーティー、スキルに偏りありすぎ!
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