第3話 アリシア、リンちゃんにバブみを感じる
「アーちゃん、きたぞよ」
「やほほ~♡ アリシアたんのお店にあーしがきたぉ!」
マーちゃんとリンちゃんご来店!
「いらっしゃいませー。『龍神の館』にようこそお越しいただきましたー!」
マーちゃんはいつもの鮮やかな緑色のマントから美しいお顔をちょこんと出して♡
今日のリンちゃんはとってもオシャレにドレスアップね! ラメラメのロングドレスで大人っぽい♡ 褐色の肌によく似合ってるー!
「ささ、こちらへどうぞー。VIPルームにご案内しますー」
「ソフィーはどうしたのじゃ?」
マーちゃんが不思議そうにキョロキョロと辺りを見回している。
「あー、ソフィーさんは今日ちょっと外出していて。もう少ししたら帰ってくると思います」
「なんじゃ。肩車はなしかの……」
マーちゃんがすっかりと肩を落としてしまった。
声も沈んでいてとってもかなしそう。ソフィーさんの肩に乗ってVIPルームまで運んでもらうのをけっこう楽しみにしてたのね……。
「わかりました! 今代わりの肩をご用意しますからちょっとお待ちを!」
アイテム収納ボックスからトランシーバーを取り出して、控室に呼びかける。
「応答せよ、応答せよ。こちらアリシア。緊急通信です。オーバー」
待つこと数秒、反応があった。
『こちらセイヤーっす。アリシアちゃん何かあったっすか。オーバー』
「おお、セイヤー。エリオットはいる? そのままのかっこうでいいから、大至急、お店の入口までくるように伝えてちょうだい。オーバー」
『Yes、暴君幼女! 大至急向かわせるっす。オーバー』
これでヨシ、と。
「いましばらくおまちをー。すぐに良質な肩が到着しますからね」
「うむ。頼むぞよ」
「良質な肩ってなんだぉ?」
「すぐにわかりまーす。お楽しみにだぉ♡」
満面の笑みを浮かべるマーちゃんと、首をかしげて変な顔をしているリンちゃん。
きっとリンちゃんにも肩車サービス、気に入ってもらえると思いますよ!
「あひゃひゃひゃひゃ! これは楽しいぉ! もっとスピード出すぉ!」
「この若い肩もなかなか乗り心地が良いの」
「ぐぅぅぅぅぅぅぁぁぁ! なぜ私が~こんなことを~!」
「ほらほら、エリオット! もっとスピード出してー。女神様たちのおもてなしだよー」
上半身裸で湯気を立ち昇らせたエリオットが、息を切らせてお店の受付へと現れたわけで。まあ、いつものように鏡の前でポージングでもしていたのでしょう。
何も説明せずにマーちゃんとリンちゃんを両肩に乗せて、「VIPルームへGO!」という次第なのでした。
「いけいけー。そこでスーパートウループだ! スターライトイリュージョン☆」
「うぉぉぉぉぉぉぉ! スターライトイリュージョンッ!」
いいよいいよー。背中の筋肉が鬼になってるー! ソフィーさん越えも近いかー⁉
「あひゃひゃひゃひゃ! 高い高いぉ!」
「ほれ、竜巻をサービスするぞよ」
マーちゃんの粋な計らいにより、スーパートウループで天井付近まで飛び上がったエリオットの体が竜巻に巻き込まれてありえないくらい超高速で回転を始める。
「あばばばばばばばばばばば」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「良いの良いの~!」
あー、これは……エリオットが竜巻に巻き込まれて……もはや竜巻に……息できずに死んだかー? まあ、マーちゃんとリンちゃんがめちゃくちゃ楽しんでるから……しょうがないよね! 魔族だし! きっと心臓が止まっても魔族の核が動いてなんとかしてくれるってやつよね⁉
「はい、着地ー。すかさず心臓マッサージ! 雑にパンチ! ドーン!」
お、動き出した動き出した♪
「ほら、エリオット! 足が止まってるよ! VIPルームへGO!」
「あれ……今一瞬何か……美しい女神様とお話を……」
エリオットは立ち尽くしたまま動けずにいた。なんだか視線が定まっていないみたい。だらしないなー。
「エリオットくんどうしたのかなー? 夢でも見てたんですかー? ほら、女神様たちはエリオットの両肩に乗っていらっしゃるよ! さあ、粗相のないようにVIPルームへGO!」
「お、おお……。VIPルームへGO!」
OKOK。仮死状態の時に女神様が見えたら危ないからね! なんとか異世界転生せずに戻ってこられて良かったー。
「はい、到着! 当店自慢の肩車移動はいかがでしたでしょうか⁉ お疲れ、エリオット!」
ホントはマーちゃん専用のサービスだけどね!
「あひゃひゃひゃひゃ! もう1回頼むぉ!」
リンちゃんが入り口を指さす。戻れ、と。
「ざんねーん。こちらのサービスは1日1回限りとなっております。また次回のご来店の際にサービスしまーす♡」
ちょっと休ませないとエリオットがホントに異世界転生しちゃいそう。このあとショーもあるし、とりあえずHP回復ポーション飲んでおいて!
「ささ、すぐにお食事とお酒を用意しますからねー。天使ちゃんたち、おもてなしを!」
マーちゃんお気に入りの天使ちゃんを横につけ、急いで料理のセッティングを始めていく。
「お酒と料理、楽しみだぉ!」
リンちゃんの興味はすぐにテーブルのほうへ。目を輝かせながら運ばれてくる品々を見つめている。
そういえばリンちゃんはどんな天使ちゃんが好きなんだろう。エデンのことは気に入ってくださってたけど、別に好きって感じじゃなかったよね。どっちかっていうと、ママ化してたみたいな?
「リンレーはこう見えて、女神の中でもぶち抜きで古くから存在してるからの」
「あ~もう、あーしの年齢のことは秘密だぉ♡」
「年齢? 女神様にも年齢の概念があるのですか?」
「厳密にはそんなものはないの。でも概念として存在が始まった辺りを誕生として考えるとじゃな、我よりもリンレーのほうがずいぶん先のはずじゃ」
「おー、それでバブみが……」
「ちなみに我とミィシェリアは同時期ぐらいじゃの」
ほー。正義が先で、愛と水は同じくらいの概念なんですね。不思議ー。
「いつでもかわいいリンちゃんだぉ。年齢の話はもういいぉ!」
見た目からではわからない女神様の年齢……。でもそこはかとなく漂うバブみ。きっとみんな甘やかされたくなる……。納得。
「ちょっと、下からホール見習いの天使ちゃんJrを1人、誰でもいいから連れてきてー」
きっとこれでヨシ、と。
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