第8話 アリシア、ギフトスキルを習得する

 この右手にすべてを賭けるっ!


 ポチっとな! 

 習得!

 体の中に何かが浸み込んでくる感覚。

 

 えっと何々? スキル欄の表示はー?


「レア度B『交渉Lv1』ですって!」


 いきなりレア度B! やった、けっこう当たりなんじゃないのー⁉


「『交渉』ですか。なかなか良いスキルを手に入れましたね」


 ミィシェリア様が微笑んでくれた。

 当たりですね! これは当たりなんですね⁉


「『交渉』はあらゆる交渉事を有利に進めるための話術、魅力等を上昇させるスキルです。おめでとうございます。あなたの玉の輿とやらの夢に貢献できそうなスキルですね」


「おお、交渉! 確かに使えそうです! 話術はわかるんですが、魅力とは?」


「交渉は言葉だけで行うわけではありませんよ。外見や仕草、人から好まれるのも交渉を有利に運ぶためには必要なことです」


「なるほどー。もしかして、このスキルのレベルを上げていくと、美人になれたりします?」


 まさかまさかね? でも魅力っていうくらいだから少しはそういう効果も?


「はい、そうですね。幻惑スキルではないので、わずかながら実際の容姿にも適用されます」


「やったー! これは良スキルだー! 早速使ってみようかな。……あれ? どうやって使うんだろ、これ」


 とくに呪文もないし、スキル欄から選択……でもないし。


「『交渉』は常時発動している、いわゆるパッシブスキルですから、呪文を唱えたりするものではありません」


「ほー。なるほど? じゃあもしかして、わたし、ちょっと美人になったりしました?」


「どう、でしょうか……。そうですね。……はい、教会に入ってきた時と比べて、背が1cm伸びていますね。バストサイズとヒップサイズがそれぞれ0.1cmずつ大きくなっています」


 んー? わずかすぎてわからない……。まあでも、効果は出てる、のかな。


「まだ10歳ですし、そこは今後に期待しても良いのではないですか?」


「そうですね! Lv1でいきなりミィシェリア様みたいに女神一の美貌を手に入れられるわけないですよね! わたし、修行しますね!」


「女神一ってそんな……褒めすぎですよ。たしかに私の美貌は比類ないものですから、少しでも近づけるように努力する気持ちはとても良いと思います!」


 鼻の下が伸びてデレデレですね。

 ヨシ、交渉Lv1、効いてるみたい。あと少しでお持ち帰りできそう!


「お持ち帰りされませんからね⁉ オホン。早く次のスキル玉を解放しなさい」


「ちぇー。わかりましたー。スキル玉オープン!」


 さっきと同じ、体の中にスキルが入ってくる感覚。

 さあ、もう1つのスキルは何でしょね、と。


「レア度A『構造把握Lv1』……レア度A⁉」


 レア度Aのスキルなんてもらえるんですか⁉

 マジぃ?

 100年は観測されていないって言われてるレア度A⁉ 大丈夫なのこれ? マジのマジ⁉


「レア度Aですか。素晴らしい。おめでとうございます。『構造把握』は、そのスキル名の通り、人工物、自然物問わずあらゆる構造物の解析して明らかにできるスキルです。人工物であれば原材料や生産方法なども明らかにできます」


「ふーん? なんか難しそうですね……。うーんと、さっきの壺を見せてもらってもいいですか?」


 材質のよくわからなかったギフトスキル壺。それを構造把握してみよう!


「ギフトスキルの壺ですね。どうぞ、練習がてら見てみると良いでしょう」


 ミィシェリア様が壺を取り出して、わたしの前に差し出してくれる。

 スキル発動せずに見ても、やはりただの白い壺だ……。


「ありがとうございます! さっそくスキルを使ってみます! スキル:構造把握!」


 おお……おおおお?

 見える、見えるぞー!


「『女神の一部を原材料とした神器。収納方法・製造方法は参照不可』ですって。……女神の一部ってなんか怖いんですけど。あと参照不可って」


 わかったようなわからないような?


「構造把握にもレベルがありますから、Lv1では神の手によって作られた神器の構造把握はまだ難しいでしょう。レベルが上がれば少しずつ見える範囲が広がって行きますよ」


 そういうものかー。これも修業が必要そう。

 

 あれ、急にめまいが……。


 頭がグラグラと揺れだし、とてもじゃないけれどその場に立っていられなくなる。


 あ、やばい。


 わたしは平衡感覚を失って倒れ、頭から地面に突っ込んでしまう。

 と、わたしの頭をやわらかな感触が包み込んだ。


「あ、すみません」


 見上げると、ミィシェリア様がわたしの体を抱きとめてくれていた。


「そこは『ありがとうございます』が正しいのですよ」


 ミィシェリア様は、ゆっくりと瞬きしながら微笑んだ。

 わたしはそれをぼんやりと見つめてしまった。

 ホントきれい……。あ、長いまつ毛の下に影ができてる……。


「ありがとう、ございます……」


「はい、よくできました。初めてのスキル使用ですから、MPの残量にかかわらず、身体に大きな反動があるものです。今後新しいスキルを手に入れた時は十分注意してくださいね」


 そういうものなのかあ。

 知らないことがいっぱいだ。


「スキル:構造把握」


 おお、たしかに2回目は気を失ったりしなさそう。


 女神:ミィシェリア。見た目は自由に可変できる。現在の身長155cm・体重XXkg・バストXXXcm・ウェストXXcm・ヒップXXcm。装備:天女の羽衣。天女のブラジャー(ノンワイヤー)。天女のショーツ(Tバック)どちらも非売品。


「どさくさに紛れて、私の構造把握をしようとするのはやめなさい!」


「えーでも、Lv1だとぜんぜんわからないです……。バストが3桁なことくらいしか」


 女神様ってすごい! 絶対わたしのモノにしよう!

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