第7話 アリシア、ギフト玉を手に入れる

「これがわたしの人生を変えるスキルだー!」


 だー。

 だー?

 あれれ?


 取り出したるはスキル玉。……2つ。つながってる? 双子玉?


 わたしがつかんでいるのは白く輝いている玉1つ。だけどそれにぶら下がるようにして、もう1つ白い玉が壺から顔を出しているのだ。細い光の糸のようなもので、2つのスキル玉はつながっているみたい。


「えっと、ミィちゃん、これは……?」


 わわわわたし、不正なんてしてないよ⁉

 勝手につながってて……これどうすればいいの?


「これは……。ごく稀に、2つの『ギフトスキル』を手に入れる方がいらっしゃるというのは聞いたことがあります。私自身、それを目の当たりにしたのは初めてのことですが……」


「LUK≪幸運≫ステータスを上げたから運がいいだけ、ってことでこれはもらえる? ナハハ、さすがにそれはないかぁ。やっぱり没収的な感じですかね?」


 さすがに2つともギフトスキルをもらえるなんてことは……ちらちら。さすがにそんなラッキーは……ないよね……?


「『ギフトスキル』の壺は神託と同じです。神託に不正などは起こりえません。よって、取り出されたスキルはすべてアリシアのものです。安心なさい」


「やったー!『ギフトスキル』が2つも! マジで勝ったな! ガオーン♪」


 やっほーい! LUK≪幸運≫上げて良かったー! アンラッキーな前世バイバイ! ラッキーガールなわたしこんにちは! これから先は、おもしろおかしい人生を! 玉の輿に乗って楽に生きるんだーい!


「玉の輿に乗れるかはわかりませんが、冒険者でも2つ目のスキルを習得するためにはとても苦労するものです。何年も修行をしてようやく手に入れるもの。仮成人の最初期から2つのスキルを持つというのは、大変大きなアドバンテージを得ることになりますね」


 なぜかミィシェリア様は自慢げな表情で語る。

 スキルを手に入れるのはわたしですけどね? もしかして、うらやましいの?


「でもー、わたし冒険者になる予定ないんだけどね。できれば料理がうまくなるスキルとか、巨乳を貧乳に変えるスキルがほしいんですけど」


「アリシア自身が巨乳になるスキルを手に入れれば良いのではないですか? そんなものがあるかは知りませんが……」


 ミィシェリア様は自身の胸をわたしから隠すようにして背中を向けてくる。


「違うんですよー。ミィちゃんはぜんぜんわかってないなあ。さすがにわたし自身ももうちょーっとだけは成長したいですけどー、巨乳になりたいわけじゃないんですよ。巨乳のやつがチヤホヤされてるのにガマンならないだけっ! やつらにこの世のすべての苦痛を与えて絶望の淵においこんでやりたいだけなんですよ!」


 だけどわたしにやさしい巨乳は大事にするよ? 調子に乗っている巨乳はすべて貧乳に変えてやるぜぃ(物理)


「へ、へぇ……。そんなに憎まなくても……ね……」


 だいぶ引いていらっしゃるようだ。

 この気持ち、わかってもらえなくてかなしい。しょせん持っている者には持たざる者の気持ちなどわからないのでしょうよ。ぺっぺっ。


「あ、そんなに隠さなくても大丈夫ですよ。ミィちゃんの胸はすでにわたしのもの(予定)なので、大事に大事にしますよ。刈り取ったりしませんから安心してくださいね?」


 成人したら迎えに来ますから、もう少しだけ待っててね!


「あなたと会話していると頭が痛くなってきますね……。さあ、もういいでしょう? そろそろそのスキル玉を使ってスキルを習得しなさい。次の洗礼者をだいぶ待たせていますから、少しだけペースを上げていただけますか?」


 その言動から少々いら立ちが感じられる。

 さっきからポリポリ掻いている腕がちょっと赤くなっているよ。ストレス反応かな?


「それとね、ミィちゃん……貧乏ゆすりなんてしてると、しあわせが逃げていくよ?」


「だまらっしゃい! 誰のせいで……とにかく早くスキルを習得なさい。習得したスキルの説明しないといけないんだから」


「あれれ? もしかして怒ってます?」


「怒ってません!」


 めっちゃ怒ってるじゃーん。

 ひどいわ。わたしの人生、最初で最後の洗礼式なのに早くしろだなんて! 記念撮影してずっと記録しておきたいくらいなのに。


 それにしても、これがスキル玉かあ。

 白くて光っててすごくキレイ……。

 まるで白熱電球みたいだけど、触っても温かみはないなあ。

 なんかちょっとおいしそう……。


 ドロップアイテムの中でも、ごくごくたまーにスキル玉が出ることがあるらしいけど、おそらく一般人がスキル玉を目にする機会は洗礼式の時だけ。普通、訓練で得られるスキルというのは、習得条件を満たした時に、すぐに使える形で体に刻みこまれるものだからね。


「……まだですか?」


「ねぇねぇ、これって、見た目でレア度がわかったりするんですか?」


 並べてみても、どっちも同じに見えるなあ。

 白はノーマルカラーかな? だとするとはずれスキル? レア度が高いとやっぱり虹色だったり?


「いいえ。スキル玉の見た目はすべて同じです」


「なるほどー。どんなスキルなのかは見た目ではわからないんですね」


 おー、レア度示唆の演出はなし! 習得してみないとわからないのかあ。ドキドキしてきたわー!

 

「じゃあ、習得しますよ! いいですね⁉」


「早くしなさい!」


「そんな! 何と言われようとも、今ここで習得しちゃいますよ! いきますよ!」


「だから早くしなさいって!」


「あ、もしかして、このスキル玉って、温めたりするとレア度あがりますか?」


 熟成させるとコクが出てまろやかに。


「上がりません」


 そうかあ。残念。

 あとは環境変数と乱数調整の兼ね合いでどのタイミングで引くかが重要。

 ……やっぱりフレポガチャを引いてからの魔力のピークが来る深夜2時がいいかな?


「すみやかに習得してもらえませんか?」


 うるさいなあ。


「ちょっと……集中してレアなスキルを引きたいんで静かにしてもらえます?」


 まったく、空気読んでよね!


「いい加減早くしなさい!」


 天と地と祝福が1つの線でつながった時!

 今だ、唸れわたしの右手! いざつかみ取れ! 超絶レアスキル!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 わたしの全力はこれだぁぁぁぁぁぁ! いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

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