スペルマ大王はかく語りき!!!
立花 優
第1話 超天才
この物語は、今から、数年後の話である。
その年、日本一と言われるZ大学で、何とそれまで世界でも上位を誇っていた、スーパーコンピュータの「富岳」の、一万倍を超える演算処理能力を持つ、スーパーコンピュータ「エベレスト」が、Z大学の若き教授たった一人の発案によって発明された。
一体、どう言う方法を使ったのか?
ここで、断っておくが、この私は法学部卒で、コンピュータに関する知識は全く無い。ただ、この物語を、淡々と書いているだけなのだ。なので、コンピュータ上や、AIの構造上の解釈についても、説明しろと言われても出来ない事を最初に述べておく。
で、そのZ大学の若き教授は、田中均と言う、極、ありふれた名前なのだが、その時、発表されたスパコン「エベレスト」の論文は、あまりに難解過ぎて、発表当時、世界でも10人の学者さえ理解出来なかった、と言う。
ついたあだ名が、アインシュタイン以来の超天才である。
どうも、量子コンピュータに何らかの工夫を持ち込んだらしい。一説には、光速を越えるスピードで、スパコン内を電流が流れているらしいと噂された程だ。
しかし、電流の速度は光速だ。秒速30万キロメートルだ。それを超える事は、物理学的にはありえ無いのだが、しかし、そうでも想定しないと、あの異常な、計算速度は、説明出来なかった、と私は聞いた。
光速を超える事は、相対性理論上では不可能である。では、どうやって、光速を超えるような電流の流れを作ったのだろう?
田中均教授の論文には、ここら当たりの説明も詳しく書いてあったらしいのだが、ともかく異常に難解である。一般人には、全く、理解ができる筈も無い。この私も、全く同じ事が言える。
しかし、スパコン「エベレスト」の計算速度の速さは、何度、実験しても、明らかに既存の「富岳」等等の一万倍である。なお、例え、一万倍の演算処理能力を獲得したとしても、それに付随するAIも一万倍の能力を得るのでは無いとは言うのだが……。
ここら当たりの理屈は、やはり、私の能力では、どうしても説明不可能である。
だが、この事実(演算処理能力の早さ)だけは、動かし難い事実であった。ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、イエール大学、トロント大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、等の超一流大学から、次々と、実験結果の正確性が報告された。
で、その年の、ノーベル物理学賞は、この田中均教授で決まりだと、世界の人は皆思った。
◆ ◆ ◆
さて、ここは、当該、Z大学の一室である。
直ぐ側に、小型のスパコン「エベレスト」が置いてある。しかも、このスパコンは、大きさにおいても、常識を覆す程の小さな物体だった。普通の大人用のロッカールーム10台分程度の大きさだ。そしてそこには、スパコン「エベレスト」に連携した、液晶画面と同じくAIスピーカーもあった。
で、この田中均教授には、Z大学でもとびきりの美女が助手にいた。無論、田中教授が自分で選んだのだが、超美人を選べれるのは、教授の権限でもある。
だが、この超天才は、また、異常なほどの性欲の持ち主だった。
しかもオカルト信者と来ている。
田中教授曰く、如何なる小さな生命も、例え、それが「生き物」である限り、アメーバのような単細胞生物でも「心」を持っている、と堅く信じていた。
田中教授は、フロイト博士の弟子の、カール・グスタフ・ユング博士の問えた「共通的無意識」の理論を更に発展させて、「人間の心」は勿論、最終的に「宇宙意識」まで、全てが繋がっていると堅く信じていた。
このような異常な信念を持っていたため、単細胞生物の無意識な「心」を、スパコン「エベレスト」に組み込んだ独自のAIで、解析し、アバターとして画像化と、スピーカーから聞き取る事が、最終目標だったと言う。
さて、この研究室の脇に、仮眠用のベッドが置いてある。羽毛布団とカシミヤの毛布も置いてあった。
3日間、研究を続けていたため、田中教授の下半身は、既にギンギンになっていた。
で、絶世の美女の明智美桜(あけち みお)が、側にいる。意味ありげな表情でチラチラと助手に目を向けた。
それに気づいた明智美桜は、急に、大声を出して、田中教授に詰め寄った。
「先生、このインスタは、何です?これ、歌舞伎町の風俗店じゃないですか?」
「あ、い、いや、そ、それは……」
「これは、私の友人が、変装して風俗店に入って行く田中先生を発見して、私に送って来たものです。
何です!この『アソコ・デラックス』と言う店は?
スマホで検索したら、歌舞伎町の超高級ソープランド店じゃ無いですか!」
「い、い、いやあ、まさか、それがバレるとは?」
「ここに適齢期の女性の私がいるのに、一体、どう言う事です。ちゃんと、説明して下さい」
「いやあ、それは、明智美桜ちゃんはもの凄い美人だから、どうせやらせて貰え無いだろうと、つい、つい短絡的に何十度回も通ってしまったのだ。そこは堪忍してくれよ」
「あのう……、私も自分で先生の助手に志願したのです。必ず、将来、結婚してくれるなら、いつでもOKですよ。常にその心構えだけは、キチンとして来たつもりです」
「ほ、ほんまかいな?」と、思わず、出身地の関西弁が出る。
「ホントですよ。必ず、結婚してくれるならね……」
「じゃ、この前、買っておいたこの指輪貰ってくれるかい?」
「じゃ、これは、婚約指輪なのですね?」
「そうです。ともかく、今年のノーベル賞の発表後、式を挙げようよ。まあ、ノーベル賞が貰えようが、貰え無いであろうが、関係無しでね!」
「だったら、お好きにどうぞして下さい。こう言う事態も想定して、キチンとピルも飲んでいるから、何も付けなくていいですよ。ただし、あちらの病気は大丈夫でしょうね?」
「あの店は、超高級店で衛生管理は完璧に徹底している。絶対に、大丈夫だよ。
それにだ。つい最近検査した、エイズ、梅毒、肝炎ウイルスの検査でも陰性だったよ」
「でしたら、私は全くの未経験者ですので、お手柔らかにお願いします」と、御丁寧な挨拶をした。
「大丈夫、大丈夫。超高級風俗店通い、10年間のワザを、まあ、見てなさい」
こうして、二人は、合体した。
しかし、その直後、スパコン「エベレスト」の液晶画面やAIスピーカーが、異常な動きを、開始し始めたのだ。
即座に、明智美桜が、スパコンの液晶画面に飛びつく。
「パターン:青です!!!」と、明智美桜が言う。
「『使徒』襲来か?」
「先生、庵野秀明監督のエヴァンゲリオンの映画の見過ぎですよ。こ、これは、精子の大群を、AIが関知した模様です」
「精子の大群か!もしかしたら、微生物の声がホントに聞こえるようになったのか?」
そして、ここから、正に奇想天外・奇々怪々の常軌を逸した話が、次々に起きて行くのである……。
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