第一話②
今年、建国百周年を
百年前──
魔女のひとりは王の
残りのふたり──ひとりは
最後のひとりは四人の魔女のなかで、もっとも魔力が強く、天候を
それから百年の歳月が流れ、魔女たちも
しとしとと、
この日、
「閣下、本当の本当の本当に向かわれるのですか?」
大きく揺れる馬車のなか、ハンチング
貴人の従者を務める彼は目がどんぐりのように丸く、童顔だ。
だが、今日はずいぶん身をちぢこませて客車の
「いやしかし、《魔女》だなんて、聞くだけで
「さぁ、私はそうは思わないが」
「俺は恐ろしいです……」
ザシャの声がわかりやすく
「だから今日はついてこなくていいと言っただろう」
「そ、そんな、俺が恐ろしいからといって、閣下おひとりで行かせるわけには……」
ハンチング帽を握る手に力がこもり、どんぐり
ふたたび、馬車が
「着いたようだ」
レオラートが窓に視線を向けた。
「《雨の魔女》が
初老の
「おおお、お
「まったく、
水害が起こらないだけマシですがね、いったいぜんたい、どうしてこんなにも雨の日が多いんだか……、とザシャがブツブツと
もとは青く
視線をその青い家に定めたまま、レオラートは足を進め、塀の切れ目から庭に入った。「か、閣下……」とザシャの声が後から追いかけてきたところで、
「あ、人がいます」
ザシャが前方を指差した。レオラートが目をこらすと、白薔薇の向こう、家のすぐそばで──水色の傘が揺れている。褪せた青い家のまえに水色の傘。目のいいザシャでなかったら気づけなかっただろう。女だろうか、長い金色の
「閣下、あの人に話を
「恐ろしかったのではないのか?」
「あれはどう見ても若い女でしょう。魔女っていうのは、もっとこう……黒くってギョロ目の
ザシャはおおげさな身ぶり手ぶりで、自身の想像する《魔女》をレオラートに説明すると、「とにかく、あの人に話を訊いてみます」と、白薔薇の合間を
ひとこと、ふたこと──ふたりが会話しているところにレオラートも近づくと、
「……わたしが『アレクシア』ですが」という、
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