プロローグ
「リリー・スフィア様おめでとうございます! こちらが当選金の百大金貨となります」
やたらと
今まで見た事がない、目に
それが多分百枚分、並んでいる。積み上げられたそれは
「これは
このキラキラの金貨を目の前にして、銀貨一枚の手数料が高いのか安いのか全く判断がつかない。銀貨一枚あれば私は一週間暮らせる。
しかし、これを
感情の見えない
「よろしくお願いします……」
言われるままに手続きを終えた私は、大金の入ったらしい
しかし全く想像はつかないけれど、ここには大金貨が百枚入っているのだ。一生暮らしても余るほどの大金が。
じんわりと
これがあれば、きっと家族の
その想像をすると、期待で胸が高鳴った。
城下町にある学園は国によって開かれていて、成績が
産まれた時から
家事以外の殆どの時間を勉強に
入学許可証と成績優秀者の手紙を受け取った母は、嬉しそうに手紙を
「学園にきちんと入学が出来たのね。良かったわ。あなたは勉強しか取り
あの時、本当に
「これを食べてきちんと
「なるべく多く送れるように頑張ります」
「そうよ。私たちもアンジェもとても期待しているわ」
妹であるアンジェも、いつも
「家族である私たちの為に頑張ってね、リリー」
私は頑張りが認められ、期待されていると
学園まで通うと交通費がかかり
家族に必要とされている、と思える事が嬉しかった。
生活はとても貧しかったけれど、家族である私たち、という言葉を思い出すと自然と笑みが
送金すると、何回かに一回は家族から受け取った
手紙は今持っている小さな荷物の中に大事に入れている。
大切に
学園を卒業し
しかし、そのやりとりも過去の事だ。妹の
更に
私は、
寮からも追い出され、
今の自分が歓迎されないと知りつつも、家族に会いたくてたまらなかった。
だけど、家族に送金するすべすら失ってしまった私は、会いに行く勇気が持てなかった。
街は一年に一度の大きな夏祭りで盛り上がっていたが、私はどうしようもなく、その
そこで売っていた、大金が入るという宝くじ。大金は、私にとってまさに夢だった。
何もない私だけど、何か夢を見たくて。
そして今、私は大金を手に入れる事ができた。
これなら、と思う。
今、私はあの時よりも、ずっと大きいお金を手にしている。
きっと、歓迎してくれる。家族に会える。また
私はぎゅっとカードを
久しぶりに見た実家は、家を出た時と変わった様子はなかった。
もう一度ギルドカードに手をやる。確かにある。
どきどきとはやる気持ちを、息を
「父さん! 母さん! リリーです。いい報告があるんです。扉を開けてください」
声をかけるが、反応がない。まだお昼前で、この時間に
まさか、連絡がつかなかったのは家族に何かがあったからだったのだろうか。
不安になって、何度も強く扉を叩く。
「どうしたの? 手紙も来なかったし何かあったの!?」
私の大きな声に、通りがかった近所のおじいちゃんがこちらを
「君は……リリーちゃん?」
「あっ。はいそうです。お久しぶりです。……大きな声を出して、すみません。この時間に返事がないので、心配になってしまって。最近連絡も来なかったので、何かあったのかも、と」
おじいちゃんは、私の事を驚いたように見た後、悲しそうに息を吐いた。
「そうか、知らなかったんだね。……落ち着いて聞きなさい。君の家族は、引っ
「えっ。アンジェが結婚するとは聞きましたが、父さんと、母さんも……?」
「そう、アンジェちゃんは貴族の所に行ったんだよ。……家族と一緒にね」
私を
「……家族と、一緒に? だって、だって私にはそんな事一言だって……そんな……」
息が苦しくなり、心臓がぎゅっとなる。
私も、家族なのに。
私は家族に捨てられた。今度こそ、本当にひとりぼっちになってしまったんだ。
……私にはお金を送っていても家族として
その事に気が付いた私は、流れる涙を止める事ができなかった。
気の毒そうに何度も
家族のいないあの街にこれ以上居る事は、とてもできそうもなかった。
戻ってきた私は、そのままとぼとぼと
何もしないでいると、悲しみに
持った事のない大金は現実感がなく、それでも
当選金の説明をしてくれた
しかし、なるべく遅い時間と言われても、私には今日はこれ以上特にやる事もなかった。すぐに実家に向かい戻ってきた為に、まだお昼を少し過ぎたぐらいだ。
その為、一度ギルドに向かって、場所を確認してから考える事にした。
そうだ。仕事をギルドで
本当なら、無職の私は、大金が入った事を喜ぶべきなのだろう。
城下町は人が多く栄えていて、きらびやかだ。いつも街の
大金を持っている今も、そのみじめさは変わらなかった。
お金があるだけの何もない私は、また途方に暮れた。
お金もある。時間もある。でも、私は何をしたらいいの?
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