クラスメイトに魔女がいる俺の高校生活

洞幹也

第1話 Prologue of Shunsuke

この世には、得てして不可思議なことが起きる。それはたとえば都市伝説であったり、迷宮入りした密室殺人事件であったり。その度に人々は、頭を抱え、苦悩し、迷走し、答えがないことを答えにして片付けてきた。挙句の果てにはそんな話に尾ひれをつけて拡散し、エンターテイメントとして楽しむ者もいる。

そして今、エンターテイメントとして楽しむ側の人間、俺こと名鳥俊介の身にも不可思議な事象が起きていた。


「なぁ、いい加減その変な棒みたいなのしまっといてくれよ。恥ずかしい」

「これは変な棒でも何でもないわ!これは私がお母さまから与えられた魔法の杖を模したものよ!」

「今どきの幼稚園児のほうがもう少しましなのを作ると思うぞ」

「う、うるさいわね!細かい作業は苦手なのよ!」


俺の隣を歩くブロンドヘアの少女はハツラツとした声をあげ、左手に持ったカラフルなステッキをぶんぶんと振り回している。

ちなみにこのステッキ、アルミホイルの芯に折り紙をぺたぺたと貼り付けカラフルに装飾、そして先端には金の折り紙で作った星がセロハンテープで無造作にくっつけてある。無いと落ち着かないと言うから持たせているが正直目立つからやめてほしい。今日だって何人の園児に指をさされたことか。

ほんと、もう少しマシなの作れよな…。今度こっそり改良しといてやるか。それとステッキの名前は「プリン」。なんか好きらしい。知らん。

 そんなプリン好きの少女の名前はティア。俺と同じ星蘭高校に通う一年生。俺と同い年だ。


「それより聞いたか!星蘭高校の幽霊の話!今度は体育館に出たらしいぜ!」

「うわ、出た。俊介の都市伝説オタク病。普段クールなふりして都市伝説の話になると急にテンション上がる癖やめたほうがいいわよ。キモいから」

「うるせぇな!だいたいオタクは病気じゃないんだよ!」

「はいはい。それよりその類の話ならもっと話題になってるのがあるじゃない」

「ん?ああ、比良坂よもぎの話か」

「事故死して葬儀までされた人気アイドルの比良坂よもぎが突如生きた状態で現れた。今日は朝からこのニュースばっかりだったし、この話のほうがよっぽど信じられない話よ。てっきり今日はその話題を一番に話すものだと思ってたのに」

「……その話は……ってか報道されたのは写真だけだったし、インタビューの映像も音声だけなんだぞ。あんなの合成でいくらでも作れる。誰もそんな話信じちゃいねーよ。だいたいニュースなんてものも実は裏で大きな力が働いていて…」

「あーもう!わかったから早く学校行くわよ!またギリギリじゃない!」 


 もう一度言おう。人類は、答えの出ない不可思議な事象が起きたとき答えがないことを答えにして片付ける。そして俺みたいな人間はその話を考察し、推察し、妄察して楽しむ。誰も答えを教えてくれないのだからしょうがない。そうやって半分も信じてこなかった。少なくともこいつに出会うまでは。

今までの人生で女子との接点なんてろくになかったこの俺がこうして女子と登校を共にするのもまたおかしな話。

そう、彼女と出会った日からだ。その経緯を説明するには時を少し遡る必要がある。そして、それからだ。俺の高校生活がおかしな方へと傾き始めたのは。


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