第470話 イタルリス王国王都2
☆★☆★☆★
「コルビーさんとの繋がりが途絶えました…」
「それはつまり?」
「意図的に向こうが切った事も考えられますが…。これまでは切れてなかった事を考えると、やはり死亡した可能性が高いかと…」
「……そうか」
イタルリス王国王都。
とある豪邸の一室にて。
腕組みショタボスのエプスが、沈痛な表情をしているアランからの報告に天井を見上げる。
コルビーと連絡がとれなくなってから約一ヶ月が経った。アランは毎日のように恩恵を使って連絡をしようとしていたが、とうとう最後まで連絡する事は叶わず。
ついに今日、繋がり自体が途絶えてしまった。
「ラスの街の私が連絡取れる者も全員、音信不通になっています。捕えられる前に僅かながら集めた情報もありますが…」
「分かったのは『クトゥルフ』って、組織の名前だけだったね」
「はい。しかもこの『クトゥルフ』は、最近国内の各地で急激に勢力を伸ばしてきている裏組織です。『ランゲタ』の支部もかなりの数が制圧されてしまっています」
アランの恩恵は『テレパシー』。
繋がりさえあれば、相互で連絡が取れるという連絡役としては非常に便利なものだ。
この恩恵を活かして、王都で『ランゲタ』の連絡役をこなし、戦えないながらも幹部の一人に名を連ねている。
アランと繋がりのある者は国内各地に散らばっていて、そこから地域の情報などを吸い上げて、組織運営に役立てている。
ラスの街のコルビーはもちろん、主だった構成員や街中に溶け込んでいた構成員もアランの繋がりの対象だったのだが、コルビーと連絡が取れなくなってからすぐに、こちらとも連絡が取れなくなった。
こちらの繋がりは遅くても1週間ぐらいで途絶えてしまってる為、全員が殺されてしまったのではないかと言うのがアランの…いや、ボスのエプスの考えだ。
捕えられる前に僅かながら集められた情報は『クトゥルフ』という組織が、ラスの街の『ランゲタ』の全てを乗っ取ったという事。
『ヨグ=ソトース』と『ルルイエ商会』にコルビー達が襲撃してる間に、漁夫られたのだ。
『クトゥルフ』と言えば、最近国内各地で『ランゲタ』の支部を潰して行ってる新興の裏組織である。
実際は他国で活動しまくってるので、もう新興組織ではないのだが、イタルリス王国では急にポッと出てきたので、エプスはそういう認識でいる。
当然『ランゲタ』側も反攻しようとしているが、一気に複数箇所でそんな事が起こった為、少し後手に回ってるのが現状。
そんな時に幹部の一角が落とされ、貴重な収入源だったラスの街も落とされた。
『クトゥルフ』は本格的に『ランゲタ』とやり合う気なのだと、エプスは考えている。
以前の話し合いで姿を見せていたデビッドとラリーは、次は自分達の管理してる街が狙われる可能性があるとして、守りを固める為にそれぞれの街に戻っている。
今この部屋に居るのは、エプスにアラン、それに話し合いには参加せず、ずっとご飯をむしゃむしゃしているワーナーである。
実はもう一人、リーブスもこの部屋に居るのだが、アランは気付いていない。
「仕方ない…か。こういう時の為に高いお金を払ってるんだしね」
「という事は…」
「うん。教会の力を借りよう。向こうも奴隷とかを調達する僕達が居なくなったら困るはずさ」
エプスは少し考えてから決断する。
既に後手に回ってしまっている現状、そしてほとんど情報を得られていない謎の組織が、急に台頭してきた。
これはエプスのミスとも言える。
これまでイタルリス王国は自分達の支配下で、攻められる事などほとんどなかった。
偶に小規模の新参が喧嘩を売ってくる事はあったが、それでも簡単に対処は出来ていたのだ。
だが、今回の『クトゥルフ』は、各地で複数箇所を一気に襲撃し、ラスの街をも落としてみせた。『ランゲタ』が完全に事態に気付いたのは、一通りの襲撃が終わってからだ。
イタルリス王国国内で自分達に本格的に喧嘩を売ってくる存在なんて居るはずがないという傲慢が後手に回ってしまっている原因である。
エプスは少し油断し過ぎていたと反省しつつ、すぐに次善の策を打ち出す。
そう。教会の手を借りるというものだ。
『ランゲタ』と教会はズブズブの協力関係にある。
『ランゲタ』は奴隷やら非合法な品を教会に売って、教会はクスリやらを卸す。時には『ランゲタ』のあれやこれやを教会の力を使って揉み消したりと、ズブズブのズブだ。
『ランゲタ』側は見返りにお布施と称して多大な献金をしているものの、こういう時に声を掛ければ手伝ってくれるので、Win-Winな関係だと思ってる。
流石に『スティグマ』の神罰の存在は知らないが、教会が物凄い戦力を持っている事は知っているエプスは、教会の力さえあれば、この状況も容易く巻き返せると思っている。
『ランゲタ』は教会の後ろ盾が、教会は様々な非合法な品が手に入る。イタルリス王国で『ランゲタ』が大きい顔出来てるのはこういう事情もあるのだ。
レイモンドの許せないラインを、今までの誰よりも、軽々といくつも飛び越えていくエプス。
「さあ、反撃開始だ」
そんな事を知らないエプスは『ランゲタ』の真の恐ろしさを思い知らせてやると、息巻いていた。
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