第117話 忍術
「どう?」
「にゃー。使いにくいにゃ」
むぅ。やっぱりダメか。忍者と言えば手裏剣とかクナイでしょと思ったんだけど。
「普通に短剣が一番使いやすいにゃ」
「面白みのない奴だな」
「アタシに言われても困るにゃ」
仕方ないか。ロマンを追い求め過ぎて、自分に合わない武器を使うなんて意味ないしな。
暇を持て余した俺は生産部に入り浸っていた。俺も職業は一応取得してるし、エリザベスと合作で色々作ったりする事もある。
まぁ、俺はほとんど言われた事をその通りにやってただけだから、理論とか説明されても半分ぐらいしか理解出来ないんだが。
エリザベスって絶対俺より賢いよね。
俺が教えた知識を応用発展させまくってるんだろう。物理とか化学とか、俺はほんとに基礎しか分からないから。
前世はどこにでもいる普通のサラリーマンだったし。
で、入り浸って何をしてるのかと言うと、俺の新しい武器作りだ。
ミスリルで作った棒を使ってたんだが、深層での狩りで酷使しすぎたのか、大分傷んできた。
棒を使うのにも大分慣れてきたし、そろそろ俺専用の武器でもと思いまして。アンジーだけカッコいい刀を持ってるのはズルいし。
ローザは武器に頓着しないのか、ミスリルで出来た大剣をぶん回してる。しかも二刀流。片方はゴドウィンが使ってたやつだ。大剣の二刀流ってギャグかよと思ってたんだけどね。風を纏ってビュンビュン動きながら、普通の長剣を扱うのと変わらないような動きをしてる。
俺はなんとなくで始めた棒術だけど、思いの外合ってたみたいで。いつかはマフィアのボスらしく銃が欲しいけど、棒使いを極めるのも悪くないかなと。
ほら、チャイニーズマフィアっぽいでしょ? 体術なんかも使ってるし。そういう事にしておいて下さい。
前置きが長くなったが、とりあえず生産部と協力してあーでもないこーでもないと意見を交わしながら自分にあった武器を作ってたわけだ。
で、ふと思い立った。
アリーナの忍者っぽい武器を作ろうと。
なんでそう思ったかは分からないけど、手裏剣やらクナイやらを作って提供した訳だ。
最近森の浅い場所でレベル上げを始めたらしく、武器も必要だろうと言い訳を添えて。
しかし冒頭の通り不評だった。
非常に残念である。
「でもこれは良いにゃ」
「ああ。忍刀か」
刀より短くて反りがないやつ。
「手裏剣やクナイは飛び道具にゃ? 一々終わった後に拾うのは面倒にゃね」
なるほどなぁ。
漫画とかアニメは使い捨てみたいな感じだったけど。実際使うなら勿体無いが先に来ちゃうよね。
で、拾うのが面倒と。なら拾わなくてもいいようにすればいいのか?
「それなら魔法やアタシなら忍術を使うにゃね」
ごもっともですな。
ロマンってのは難しいぜ。
「忍術って魔法とどう違うの?」
「にゃー…。説明が難しいにゃね」
アリーナの恩恵である忍術。
使ってるのを見せてもらった事があるけど、俺には魔法との違いがいまいち分からん。
本人的には違うらしいけど。でも、忍術を使うのに消費してるのは魔力なんだぜ。
俺はてっきりチャクラ的なサムシングがあると思ってたのに。
もう魔法で良いじゃんと思っちゃう。
「適性属性がない火とか土も使えるにゃんね」
火遁とか土遁とか。
なんか分身もしてるし、身代わりの術みたいのも使える。まぁ、忍術っぽいけども。
身代わりの術なんて木になったりするんだぜ。それは面白いけど、なんだかなぁ。
こう、もっと魔法と明確に分けて欲しいと言いますか。なんか違うんだよなぁ。
「アタシに言われても困るにゃん」
「お前には火影になってもらわないと困るんだよ」
螺旋◯とか千◯とか。そういうのも使えるようになってもらわないと、俺の忍者欲を抑えれそうにない。
それも魔法っぽくなく。なんか魔法で再現出来そうだもん。
「ボスはたまに良く分からなくなるにゃんね」
「これは俺だけじゃない。男の子みんなの願いでもあるんだ」
忍者に憧れない男の子なんていない。
君には俺達の欲を満たす使命がある。
………なんか卑猥な感じになっちゃったけど、そういう事だ。
是非このまま精進してくれたまえ。
レベルが上がって面白い事が出来るようになる事を祈っておるぞ。
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