幼女ハザード

呂色黒羽

第1話最初の犠牲者

俺の名前は山田日向やまだひなた。普通の高校一年生だ。今はちょうど学校に向かっているところだ。ぼーっと歩いていると、後ろからドタバタと足音が聞こえてくる。


「おはよう日向!」

「おはよう、真斗」


挨拶してきたのは俺の親友田中真斗たなかまさとだ。運動神経はいいが頭が残念な、脳筋男だ。


「そういえば、今朝のニュース見たか?なんか身元不明の幼女がめっちゃ増えてるってやつ」

「あー、あれか」


俺は今朝流れていたニュースを思い出す。

最近、身元不明の幼女が増えているらしい。幼女は全員保護され施設に送られているみたいだが、なぜかその幼女たちはめちゃくちゃ抱きついてくるとか。何それ天国かよ。

しかも幼女が増えるのに比例して、行方不明者が続出しているらしい。もう何が何だかわからない。

ただ一つ言えるのは……


「幼女が増えるのはいいな」

「それな」


これに尽きる。

別に俺はロリコンというわけではない。幼女に性的欲求なんて湧かないし、嫁にしたいとか考えた事はない。

ただ、日々の癒しが幼女というだけだ。


「やっぱ幼女だよなぁ……。俺は将来幼女と結婚するんだ……」


こいつとは違うんだ。一緒にしないで欲しい。


「法律的に無理だろ」

「それもそっか………」


それから俺達は無駄なことを話しながら学校に向かった。学校に着いたころには幼女の件なんて全て忘れてしまっていた。



授業と部活が終わり、下校する。うわ、もう6時か。冬だから辺り真っ暗だ。早く帰らないと。

少し急ぎ気味で歩く。

あ、自販機だ。寒いから、なんかあったかいココアでも買うか。

そうやって俺が財布を出して自販機に金を入れていると、背中に衝撃が走った。決して強くはないが、気付かないほど弱くはない衝撃だ。

ふと後ろを見てみると、そこには————


「は?」


幼女がいた。しかも、その幼女は俺と同じ制服を着ている。男物のブカブカの制服を着ているのだ。それに加え、めちゃくちゃ見覚えのある、幼女が背負うには大きすぎるリュックを背負っている。

まさか、あいつなのか?あいつが犯人なのか?


「真斗……あいつ、見知らぬ幼女に自分の制服を着せる性癖を隠してやがったな………」

「なんでだよ!」


舌ったらずな口調で、俺の呟きにツッコミを入れる幼女。まさか見知らぬ幼女にツッコミを入れられるとは……。あいつ、まさか調教しやがったな!?


「ぐっ……俺の親友がすまん」

「だからなんでだよ!!」


ごめん、見知らぬ幼女よ。俺があの馬鹿を止めなかったばっかりに。君にこんなことをさせてしまって……。

はぁ、あいつには後で説教プラス警察に突き出さないとな。見知らぬ幼女を着せ替えたんだ、罪は重いぞ。

それはそうと、この子をどうしようか……。どこの子かもわからないし、一応聞いてみるか?


「ごめんね、君、どこの子?」

「お前……本当にわからないのか?」


幼女が今にも泣き出しそうな顔をする。や、やばい!

幼女を泣かせるのはまずい!俺がP◯Aに突き出されてしまう!?

俺何か言ってしまったのか?

本当にわからないのかって言われたよな。じゃあ俺はこの子と会ったことがあるというのか?

思い出せ、思い出すんだ。

俺は自分の記憶を何度も何度も見返したが、目の前の幼女の姿なんて見たことがなかった。

くっ……こんなとき、あいつがいれば一発なんだが。真斗は幼女に関連したことならなんでも覚えている。くそ、なんで今日に限っていないんだ。


「俺、真斗だ!」

「え?」

「だから、俺はお前の幼馴染で親友の、田中真斗なんだ!!」


思考の海に陥っていると、突然幼女がそんなことを言い出した。え、本当に何言ってるんだ?

まさか、あいつがそう言えって命令したのか?

でも、俺へのイタズラだとしたら、あいつはもっと早くに種明かしをするだろうし、そもそもあいつは童貞すぎて幼女と話すことなんてできない。だからこれはあいつのイタズラだとは思えない。

じゃああいつはどこに行ったんだ?

目の前にはあいつの服とリュックを纏った幼女がいる。あいつがこの子に衣服を貸せるだけの度胸なんて持ってはいないだろうし……。

まさか、本当にそうなのか!?


「本当に、真斗なのか?」

「あぁ。好きな事は幼女観察、将来の夢は幼女との結婚、田中真斗だ!」


スゥ—————。

うん、間違いねえわ。この堂々としたクソみたいな自己紹介、あいつしかできねぇわ。

え、でも、え?

じゃああいつは、本当に幼女になっちまったのか!?


「……とりあえず、親に連絡しろ」


俺は、情報があまりにも多すぎて、そう言ってやることしかできなかった。



真斗が親に連絡をして、今日は俺の家に泊まる事になった。

真斗の家は隣町にあるため、駅を利用する必要がある。だが今のこいつの姿は幼女。最悪誘拐される危険性があるため乗せることはできない。

それに、家に帰ってきたのが息子じゃなくて幼女では、家族が混乱してしまうだろう。

だから今回は事情を話して、交流の深い俺の家に泊まる事になったというわけだ。

最初は信じなかった真斗の家族も、電話を掛ければ信じてくれた。ちゃんと俺からも言っておいたので問題はない。

そんな訳で、俺の家に帰ってきた訳だが……。


「お兄ちゃんが幼女を誘拐してきたーーー!!!」


さっそくこれだ。おい妹よ、俺がそんなにも変態に見えるのか……。

駆け出した妹の咲良さくらの背中を見ながら、俺は呆然としていた。



急いで駆け付けた両親と戻ってきた咲良に事情を説明して、なんとか誤解を解くことに成功した。

いや本当に大変だった。そりゃ普通幼女化なんて信じれるはずもないし普通の反応なんだけどそれをどうやって信じさせるのかが難しかった。

とりあえず真斗の両親に電話掛けて説明に付き合ってもらった。

それでやっと納得してくれた。今はみんなで真斗を見つめている。


「まさか真斗くんが幼女になるとはねぇ……」

「真斗、幼女になった感想はあるか?」

「うーん…‥あんまり普段と変わらないけど、背が小さいから視点が低い、かな……」

「いやもっとあるだろなんか」


流石に幼女になった感想がそれだけなはずがないだろう。

真斗、お前は変態なんだ。俺はお前が幼女を愛しすぎて幼女になったって言われても納得することができるからな。


「そう言われても……俺は別に幼女になりたかったんじゃなくて幼女と結婚したかったからなぁ……」

「お兄ちゃん、私確信した。この変態は間違いなく真斗くんだ」

「ああ、こんな聞いているだけで殺したくなるような発言をできるのは真斗以外にありないからな」

「ひどいなお前ら」


さて、これからどうしようか……。まずはこいつを病院に連れて行って、原因を突き止めないとな。なんで幼女になったのかわからなかったら対処のしようもない。

それに最近ニュースになってる身元不明の幼女が突然現れているという現象。それが関係ないとは思えない。

まぁ今日はもう日も落ちたし、やれる事は何もないが。


「とりあえず真斗、さっさと風呂入れ。母さんが飯作ってくれるから」

「おう。ちょっと堪能してくる」

「きっしょ」


おい妹よ。そんなに言ってやるな。こいつだって突然幼女になって戸惑っているはずなんだ。

………いや幼女になって普通に変態発言できるのってよく考えなくてもきもいわ。


「うわぁーーーーー!!」


真斗の反体制に辟易していると突然風呂場から悲鳴が聞こえてきた。

俺は急いで風呂場に向かい、扉を開けるのはまずいので扉越しに声をかける。


「おい真斗、何があった!?」

「俺の、俺の息子が……!?」

「はぁ!?」


何が何だかわからないので急いで扉を開ける。そこには、全裸の幼女がいた。無いに等しい胸に、130cmほどの背丈の幼女。

だが、幼女には絶対にあってはいけないものが生えていた。

それは、いきり立っていた。まるで何かに興奮しているかのように。雄々しく立つ様はいっそ清々しい。そう、真斗の息子だ。


「………はぁーーー!?」


どうやら俺の幼馴染は、ふたなり幼女になったみたいだ。

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