血で皿を洗う

 では、契約書にサインを、

 そう言われ、書いた、

 愛子

 と言う名前。

 私は、大っ嫌いだ。

 ニュースで、虐待死した子供の名前を見て、

 ああ、また、愛が入っている。


 私も同じ愛を受けた。


 可愛い可愛い愛子ちゃん。

 女の子は痩せてる方が可愛いのよ。


 保護された時の私の体重は、

 平均体重の半分、だった。


 ゆっくり、ゆっくり食べてね。

 施設で私は、

 食べ物、でなく、料理を知った。


 調理師専門学校での実習で、

 洋子とペアになった。

 太っている彼女を見て、

 私の受けた愛は、虚な愛だ。

 この子は、本当の愛を受けた子なんだ。

 そう思うと、腹が立った。

 癪に触った。イライラした。

 他の友達(量子だったけ?)と喋った時、

 太平洋ってあだ名どう?

 と言ったら、思いの外ウケた。


 では、これで、契約成立ですね。

 その言葉を聞いて、我に返った。

 洋子に紹介してもらった、

 皿洗いのバイト。

 雇用契約書にサインをしたんだった。

 あれ、サインをしただけなのに、

 なんで、昔のことを思いだ、し




 広く大きな、陶器の皿。

 真ん中に置かれた、剣山に、

 愛子の体は貫かれていた。

 流れ出す血は、皿に受けられる。

 醜い老人達が、皿に群がり、血を啜る。

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