灰色の洗面台
灰色の洗面台は何も言わない。いつも目を合わせているのに薄情なやつだ。僕がイヤな顔をすると決まってコイツもイヤな顔をする。猿真似ばかりで本当気持ち悪い。でも一緒に笑ってくれるのはコイツだけで一緒に泣いてくれるのもコイツしかいない。同じ気持ちになれるのが洗面台だけというのも側から見れは哀れなのだろう。相談相手がいないよりはマシだとは思う。
僕とよく似ていた。ただの鏡なのだから。
ふらふらと人によって色を変える僕は鏡のついた洗面台と変わらない。ただ僕は綺麗な灰色にはなれない絵の具の溜まった洗面台だから、人の多いところでその絵の具は注がれる。友人といると大量の絵の具を遠慮もせずぶちまけられいるような気がして気が重くなる。対して1人なら不特定多数のカラフルな絵の具をちょびっとだけ注がれるので気が楽ではある。アルコールなんて注いだ日にはせっかくの色が落ちてしまう。それはなんだか辛い。気の合わない友人なんかは一番ダメだ黒一色しかぶちまけない、その友人とアルコールを注ぐのなんて最悪だ、洗面台がくすんでしまう。
しかもそいつは洗面台を容赦なく傷つける何も知らない癖に知ったように話をする。あんなことをしたのに友達みたいな顔をする許せない。どうか不幸になってほしい。
心の中の洗面台なんてデカブツがいる限り絶対幸せになんてなれないしなりたくも無い、周りから見たら充分幸せそうなのだから多分幸せなんだ。だから今はそれでいい。
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