歌いたい男

「私は歌うのだ。なぜ歌うのか? 歌いたいからだ」

 

 こんな名言を残してはいないが、高校時代の英語教師は、とにかく授業中によく歌う男であった。

  

 ジャイ○ンよりはマシな方だと思うが、先頭せんとうの席の奴には、歌声の他につばもプレゼントしていた。

  

 そんなある日、英語教師は歌う事を辞めてしまった。それは、授業に遅れがしょうじてきたからだ。

  

「今日は歌わないんですか?」と生徒があおると、歌い出す。

 煽る、歌う。煽る歌う。と何度かこの流れが繰り返された。

  

 煽れば歌う。授業をしたくない生徒が、この発見に気付いてしまう。 

「コイツ、歌うぞ」と。

  

 白いロボに乗ったあの少年の「コイツ、動くぞ」と似てる感覚だったかもしれない。

  

 それからは英語の授業の半分は、なぞの歌を聴くというスタイルが確立かくりつされた。

  


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