女教師

 中学の授業中、窓から交尾中こうびちゅうのトンボが入って来た。

 教室には爆笑ばくしょうき起こる。

  

 思春期ししゅんきの大好物ランキング上位に、むであろう『交尾』が、白昼堂々はくちゅうどうどうと、展開されているのだ。笑わない者はいなかった。約一名を除いて…。


 社会科の女教師(彼氏募集中)

 

 トンボのカップルは見せつけるかの様に、室内を飛び回る。

  

「………」

  

 女教師はただただ無言だ。このトンボは挑発しているのか?

 残念だったなトンボよ。俺の知っている先生は、そんな挑発には乗らないのだ。

 だが、女教師はそばにあった長い棒を手に取る。

  

 ……なるほど、教室は戦場に変わった。

  

「うるさいハエだねー!!!」と女教師。

「いえ、トンボです」と冷静れいせい訂正ていせいが入る。

 女教師は長い棒でトンボを一閃いっせん。一つだったトンボは、二つになり、その場に落ちていった。

  

「先生、トンボが可哀想かわいそう」や、

嫉妬しっとみにくいよ」などの声が飛び交う中、俺は机に飛び散った白い液体が気になっていた。


 

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