うどん屋

「いらっしゃいませ」


 とても心地ここちい接客に、心を持っていかれそうになるが、みとどまる俺。

  

 今日は恋をしに来た訳ではなく、うどんを食べに来たのだ。これはうどん屋での話。


注文を終え、席で待つ事、数分。


「お待たせ致しました」


 熱々あつあつのうどんが運ばれて来る。


「あ、すいません…。レンゲもお願いします」と俺。


「少々、お待ち下さい」

  

 しばらくして店員さんが再び、もどってきた。


「ごゆっくり」


 店員さんが持って来てくれたのは小皿に盛られた『ネギ』であった。


 俺の好物が『ネギ』だと瞬時しゅんじ見抜みぬき、行動に移してくれた店員さん。


 俺はこの日、最高のおもてなしを受けたのだが、レンゲが最後まで席に運ばれる事はなかった。

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