第21話 白い部屋 - 3 -

神様の口から意外な言葉が飛び出した。


「ここにいるエルは、天使としては出来損ないなのだ」

(はん!? エルが出来損ないなわけないだろ)

「言葉が悪かったな。エルは優しすぎる。故に人間の価値判断ができない」


神の世界では人間の価値を魂で測る。それを魂値と呼ぶが、魂値を正確に測れない天使は、相手にする人間が善か悪かの判断ができない。人間の魂値を高めることは天使の役目でもあるが、致命的な欠陥を持っているエルにはその役目を全うできない。


「と言う訳でだ、正確に魂値を測る目を養うために魂値50のお前に会わせた」

「偏差値50の俺は、人間の『メートル原器』かよ!」

「まぁ、そういうことだ。人間としての基準値だな」


くそっ! 一言も反論できない自分がもどかしい。


「お前に接することで魂値50を学習し、以降に接する人間の善悪の判断ができるようになる」


また、天使も神様と同じように、人間がイメージした通りに具現化すると言う。


「容姿もなにもかも、お前の天使像そのままだっただろ」

「はい、何から何まで『どストライク』でした」


エルのように美しくて優しい女性が俺に接触してきた理由。それがわからないままずっとモヤモヤとしてきた。悪いことや人に迷惑をかけるようなことに関与していなければいいけれど、ずっとそう思っていた。


でも、俺の心配はただのとりこし苦労。なんにも心配することなんてなかった。胸のつかえが下りてスッキリだ。


「ははは、俺はエルの役に立てたんだ。それならよかった」

(エルと会えなくなるのは寂しいけれど、俺の思い出は綺麗なままで終われる)


「だが、それで話は終わらないのだ」

「へ?」


神様の話はまだ続く。




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