君も同じ空を見ていますか

~Night Sky~

私と彼の関係は、恋人ではない。


恋人と言うのには程遠い存在であった。


恋人ではないが、彼とは「幼馴染」という関係である。


私達は幼い頃から母同士で仲がよく、よくお泊りをしたり遊んだりしていた。


そうやって遊んでいくうちに私は彼に惹かれていった。


彼は私より頭が良かったから、中学から別の学校に行っていた。


それからというものの、私と彼が顔を合わせることも少なくなり、


彼と毎日のようにとっていた連絡も途切れてしまった。


やがて、私は高校生になり、電車通学をするようになったある日のこと。


私はいつものように改札をくぐり、電車を待っていた。


来た電車に乗り、吊り革に掴まろうとしたら私の隣には連絡が途切れた、


あの彼がいたのだ。なぜわかったのだろうか。きっと昔の面影が残っていたからだろう。


小学生の頃よりもずっと大人になって、かっこよくなっていた。


今すぐにでも話しかけたかった。だけど、こんな公共の場で、こんなに人がいる電車で、私だよ!覚えてる?と言って覚えてない、知らないなどと言われてしまったらあとの20分間がとても気まずくなってしまうから、やめた。


授業中は、彼のことが気になって仕方なかった。


実は少し後悔していたのだ。あのとき、話しかけていたらなにか違ったんだろうか。


彼のことを考えていたら私は今日の夜のことを思い出した。


今日の夜の空は、5年に一度、星がとても綺麗で顕微鏡で見ると鮮明に映ると言われている日なのだ。


私は星が大好きだ。昔、彼と一緒に星をよく見たものだ。


私は今日の夜が楽しみになっていた。



やっと学校が終わり、家に帰った。


今日、星が一番キレイに見える時間帯は、22時。


私はいつも21:30に寝ているが、今日は少しだけ起きていようと思った。



夜ご飯を食べ終え、お風呂に入り、もう寝る準備はできる状態まで済ませた。


私は星が一番良く見える場所まで移動した。


22時まであと5分。…4分


着々と時間が迫っている。今の時点でも、星は綺麗だ。ここからもっときれいになるなんて、気持ちが高まる。


3分。


これまでワクワクするカウントダウンは初めてかもしれない。


2分。


もうすぐだ。そうだ。星を観察するためのミニ顕微鏡を持ってこよう。確か、この部屋の箱に入れておいたはず。あ、あったあった。これでより近くで見える。


1分。


もう次に迫っている。あと少し…


…5…4…3…2…1…


さあ!


なぜだろう。さっきよりもとても明るく神々しい。


彼も今、この素晴らしい星々を見ているだろうか。


見ていたら、今私と同じ時を進んでいる。


ヴーヴー。


私のスマホが震えている。なにかと思ってみたら、彼からの電話だった。


正直びっくりしていたが、応答する。


――もしもし。


――…はい。


――大雅たいがです。


――うん。お久しぶりだね。


――望生みおは今、この綺麗な星、見てる?


――うん。見てるよ。大雅も?


――もちろん。なんか望生と一緒に見たあの日を思い出してさ。最近、連絡できてなくてごめん。学校がすごい忙しかったんだ。またいつか会えると良いね。


――そうだね。あ、電話しながら一緒に星見る?


――名案だね。いいよ。


私達は星を見ながら一緒に通話をした。


――そろそろ時間だし、寝ようか。


――うん。今日はありがとう。おやすみ。


――おやすみ。


そう言って電話を切った。


私が彼に思いを伝えることができる日はいつやってくるのであろうか。


まあ、そう急がなくてもいいことだろう。徐々に徐々に。


彼と私の関係はずっと存在し続ける、あの星のように。

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