第6話『水髪家で朝食を』(2023/10/30(月)Lit.Link投稿/元原稿は2021年12月6日(月)作成)

▼登場人物

◆奏良音(そらね)、14歳。

◆ソラ男、32歳 、奏良音(そらね)とは18歳差のある「同級生」役兼護衛役。

◆照髪 光一(てらかみ こういち)、32歳(12月24日の誕生日で33歳)、奏良音パパ。

◆水髪 視幸(みかみ みさき)、31歳、奏良音ママ。


《水髪家で朝食を》


2021年12月6日(月)朝、学校に登校する奏良音(そらね)の護衛を兼ねたお迎えに、いつもより大分早い時間帯に来るように連絡を受けたソラ男は、奏良音(そらね)の家の水髪家で朝食を用意させられていた。


というのも、今朝は気まぐれに早起きした奏良音(そらね)が朝食を作ると言って、米を炊飯器にセットしたものの。他のおかずになるものを用意する気配がなく。普段水髪家の料理を担当している料理長が「他には用意はされないのですか?もしよろしければ私がご希望のものをお作りしますが?」と聞いたが。


「卵かけごはんの予定だから……生卵は冷蔵庫に入ってるのを確認したし。後は別にいらないよ?

それより、今朝はパパも一緒に食べようって連絡入れたから。久しぶりにパパとママと三人でご飯で楽しみだなぁ♪」


とのんきな返事で。


「そうなんですか?!そ、それは楽しみですね(えっ、旦那様、じゃまだないですが、光一(こういち)様まで呼んで、卵かけごはんだけとは、食卓がお寂しすぎじゃあないですかね?いくら愛娘のお嬢様自らご用意されたものとはいえ……それに育ち盛りのお嬢様にとってもそれだけじゃ足りないでしょう。おかわりするにしても、チラッと様子見してて計ってた米の量からじゃそんなに充分な量じゃあ……)」


心配した料理長がこの家の女主人である奏良音(そらね)ママこと水髪 視幸(みかみ みさき)に確認したところ。


「そうねぇ。下手に手助けするのは、後々の自主性ややる気を削ぎかねないし。この場合は母親の私が『実はパパ(光一)が来るから私もサプライズでお料理用意してたの♪』ってすればいいのかもだけど。私、お料理が苦手だし……そうだわ、私以外で料理しても奏良音(そらね)の機嫌を損ねない人物がいるわよ?

ちょうど彼が今日の当番だし。彼に頼んじゃいましょう♪」


視幸(みさき)はそう結論を出してソラ男に早めに迎えに来てもらうよう連絡を入れたのだった。


そして、事情を聞いて、


「寝坊したと思って朝食抜きで慌てて迎えに来たが、どうやら時間を間違えて早く来てしまったようだ。登校時間までまだ時間があるし。お腹が空いてるんで台所を借りてご飯を作らせてもらってもいいか?」


と言ってソラ男が台所で、味噌汁と焼き魚と目玉焼きを作る準備を始めたのを、自分が用意した炊飯器のご飯が炊けるのを待っている奏良音(そらね)が見て。


「……ソラ男、ご飯はどうするの?今私が電子炊飯器使っちゃってるけど?」


「うーん、トーストにするか……」


「それじゃあ、目玉焼きはともかく、味噌汁と焼き魚とは合わないでしょ?」


「そんなことはないぞ?でも、鍋でご飯を炊くのもありだな。吸水時間取ると時間が足りないが……。

研いですぐでも水を多めにして最初はお粥を作るつもりでコトコト火にかけて、米と水の高さが同じくらいまで水分が吸収&飛んだらギリギリ吹きこぼれない火加減で。水分がさらに飛んで『ヒシヒシ』と鍋底で音が聞こえてきたら一気に強火にして30秒ほどで火を止めて蒸らせば。30分強くらいでも芯が残らず炊けるな」


「そうなの?」


「まぁ、自己流だがな」


「じゃあ、やってみてよ?」


「いいぞ。なら、先にそっちから始めて……。ところでお前はご飯以外は何を用意するんだ?参考までに」


「えっと……卵かけごはんの予定だから、ご飯が炊けたら生卵を割るだけだよ?」


「せめて味噌汁もつけないか?なんなら俺様が自分のついでに作ってやろうか?」


「いいの?」


「ああ、ついでだからな。ついでのついでに、台所と材料を提供してくれたお礼で、焼き魚も一緒に作ろうか?お前んちのグリルは業務用で大きいから、一度に人数分焼けるしな」


水髪家の台所には、大人数のパーティーを開く時にも対応できるように業務用の調理器具が揃っており、炊飯器も別途ガス釜で業務用のがある。奏良音(そらね)が使ってる電子炊飯器は普段の少量炊き用だ。


「ソラ男が久しぶりにうちで料理してくれるなら……頼んじゃおうかな?」


そして、この日の水髪家の朝の食卓に並んだのは、結局ご飯含めて全部ソラ男が用意したものになった。奏良音(そらね)が炊いたご飯は水加減を少なく間違えていて硬かったのだ!

水を足して炊き直すには登校時間までに時間が足りなく、ソラ男が多めに鍋で炊いたご飯(3合)で間に合わせ、足りなかった場合はトーストでまかなうことにした。


なお、奏良音(そらね)の失敗したご飯は、改めて光一も呼ばれる夕食時に改めてソラ男がおさんどんをしに来て、鍋料理を作り、そのシメの雑炊で活用される予定になっている。


「……」


後から合流した奏良音(そらね)パパの光一と奏良音(そらね)ママの視幸(みさき)と奏良音(そらね)の親子3人水入らずのはずだった席に、混じって食事をするソラ男はなんとなく気まずい。


光一とは兄弟同然に育った親友同士だし、二人より1歳下の視幸(みさき)とも、光一と視幸(みさき)が出会った社交パーティー(実質視幸(みさき)の結婚相手を決めるお見合いパーティーだった)に光一のお供として同行して以来の付き合いで。

二人が婚約して間もなく視幸(みさき)が奏良音(そらね)を身籠ったことで駆け落ち騒動に発展した時には、二人に味方もした。当時は自身も未成年であまり力になれず、二人の駆け落ちは失敗したが。視幸(みさき)が奏良音(そらね)を生むことだけは許されて……。


ソラ男は今年の3月までは水髪家に居候していて、視幸(みさき)と奏良音(そらね)と自分の3人、もしくは遊びに来た知人たちも含めた食事には慣れていたものの。そこに光一が加わると、光一が奏良音(そらね)たちと一緒に暮らしていなく、たまに一緒になった場を邪魔してしまっていると思うと、居心地が少し悪い。


「……(何で二人は未だに結婚していないんだろうか?普通は上流階級で婚約までしていて、結婚前にああいう世間一般でいう不祥事が発覚した場合には、即結婚でお祝いムードに紛らすのが慣習らしいが。二人の場合はどちらも未成年で、光一は留学が決まってたから即結婚は難しかったにしても。

その後に光一の家が没落して光一自身も留学先で行方不明になったまま長らく音信不通だったから、その状態では無理だったにしても。

二人の娘の奏良音(そらね)が、何故か不登校でほとんど引きこもり状態だと気づいて、その母親である視幸(みさき)のこと共々心配していても。本当の父親の光一を差し置いて俺様が会いに行くことであらぬ疑いの噂が立ってはいけないと、同じ街に住んでいながら声をかけることもできずに見守ることしかできずにいて。

でも、俺様自身も闇組織に拉致監禁された先で……人格交替してる時に、同じ闇組織で別の派閥に属する光一が保護してくれていたらしいが……行方不明になって。その滞在先からどうやって戻れたのか?日本のこの街で記憶喪失状態で偶然、奏良音(そらね)に拾われて。それでしばらく記憶がないままで居候させてもらって一緒に暮らしていたとか……。

奏良音(そらね)はともかく、当然、視幸(みさき)は俺様のことを知っていて保護してくれたんだろうし。それは光一も知っていて認めていたそうだが。

……本当に、二人は何で結婚していないのか?今では、世間でも二人は別居していながらも仲の良い事実上の夫婦として知られているし。今なら、結婚しても問題ないはずだろうに。

水髪家か光一の実家の照髪家の相続問題でも絡んでいるのか?視幸(みさき)には6歳下の弟の倖渡(ゆきと)君がいるが……)」


ソラ男がそう考えている間にも食卓で交わされている奏良音(そらね)たちの会話は、ごく普通の家族で交わすような他愛もないものだが。それだけに他人の自分がその場にいていることにソラ男は違和感を覚えてしまう。


しかし、光一と視幸(みさき)は意識的に、奏良音(そらね)は無自覚に、ソラ男も含めて家族だと思っていて。そして、視幸(みさき)の未来視の能力で視た未来像の通りであれば、将来、ソラ男は奏良音(そらね)の運命の相手として奏良音(そらね)の夫となることで、この場のソラ男を含めた4人は実際の家族になる予定なのであった。


※※これはフィクションです※※


色々説明を交えたら。ソラ男が以前に居候していた奏良音(そらね)の家で、久しぶりにおさんどんを頼まれてしまった(奏良音(そらね)のやったことの失敗の後始末で)、というだけの説明文のつもりが、思っていた以上に長くなってしまいましたf(^_^;)


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